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「なんかぁー。デート中にゴメンなんだけどぉ、百メートル先くらいに、誰か悪霊に呪い殺されそうになってるんだけどぉ、やばくね?」
 この喋り方、やっぱりギャルっぽい。もっちゃんは黒髪だけど金髪に染めてやりたいと思った。
「大変だわ!ブンくん大きな悪霊を倒さないと。サポートはするけど、助けてあげて!」
「俺?そんなに何度も悪霊退治したことないし、ここはレナちゃんがやった方が確実なんじゃない?ルキとパキネだって悪霊退治できるんだし、俺じゃない方がいいって」
「そんな心構えで邪神に勝てるわけないでしょう?いいから!早く!」
 手を引っ張られて、俺たちは走り出した。なんでこんな真夏の公園で誰かが呪い殺されなくちゃいけないんだ。
 でも想像していたより事態は深刻だった。
 小学生、多分一年か二年生の女の子が街灯のてっぺんまで裸足で登り切って降りれなくなっているみたいだった。電球の部分にしがみついていて表情も見えないけど、怯えているようにしか見えない。
 そして何より女の子の背中からは灰色の炎が上がっていた。
 街灯の下には友達らしき女の子が一人、心細そうに立っていた。
 電車のホームであの炎に触った時のことを無意識に思い出していた。アレに触ると死にたくなる。でも、きっと今回はあの子供が『死んでしまうかもしれない』という恐怖が悪霊を進化させてしまったんだと思った。
 街灯の高さは約八メートル。登ることは出来るけど、どうやって一緒に降りたらいいのかいいアイディアが思いつかない。
「ブン!登ったらまず悪霊を御払いして!無理に降ろさなくていい!」
 そんな中途半端なこと、この子がかわいそうじゃないか。そう思ったけど、それ以上に、心配なことがあった。
「御払いって、そんな、しかも普通の悪霊じゃなくて進化した悪霊を、どうやって倒せばいいんだよ!」
 背筋に汗をかいた。ベタついた嫌な汗だった。御払いできる自信がない。
「ブンくん、なるべく灰色の炎には近づかないで、手だけ炎に向けて、今までで一番怖かったことを思い出して!あの女の子は恐怖で悪霊に支配されてるから、それに勝るような恐怖体験を思い出しながら、悪霊にぶつけて!今119に連絡するから!とにかく悪霊だけ倒すだけでも生存率は違うから!行って!」
 レナちゃんのアドバイスをきいて、俺は靴と靴下を脱いだ、そして、街灯のてっぺんを目指してゆっくり登って行った。緊張で足の裏に汗をかいて何度も滑ったけど、助ける以外の選択肢がなかったから、脚と腕に全力の力を入れて、街灯の頂上付近までたどり着いた。
 その時、やっと女の子と目が合った。だけど、女の子は俺を見ても安心するどころが、更に電球にしがみつき、背中の灰色の炎を巨大化させた。
    
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