おれの守護霊疫病神。隣の席は巫女だし邪神と戦う準備できた

６１

　握ってくれたレナちゃんの手を握り返した。横目でレナちゃんを見たら、耳先を赤くして、ほころぶように笑顔になった。
　こんなことで喜んでもらえるのか。と、拍子抜けした。だってレナちゃんを学校でナンパする男子たちは滅多に笑わない彼女を喜ばそうと、いっぱい話しかけたり、差し入れの飲み物を買ってきたりするのに、俺が手を握り返しただけで、こんなに嬉しそうにしてくれる。
「私、本ばっかり読んで他人のこと見ないようにしてるけど、ブンくんはルキのことも見えるし、私のこと見た目で判断しないでくれて嬉しかったの」
「俺は……面食いだよ」
「そうなんだろうね。パキネちゃん可愛いもの。見えなくなったら嫌よね」
「うん。だけど邪神に負けたら、俺もパキネも危ないんだ。協力してほしくてレナちゃんと付き合うって決めちゃって、なんかごめん」
「私だって逆の立場だったら、ブンくんに助けを求めたと思うから、気にしないで」
　気にするなって言うのは無理だと思った。
　不幸なことがどんなに続いても、幸せが少ししか訪れなくても、邪神に負けたら死んでしまう。それだけは決定事項なんだ。
「俺、死ぬかもしれないじゃん？」
「人間だものいつか死ぬわよ」
「でも、すぐかもしれない。高校入ってから何回か死にかけたし」
「高校に入ってからかぁ……」
　あっという間だったとは思わなかった。SNSではいまだに車の上を歩く俺の動画が出回っているし、住所を特定されてからは学校以外の場所でも常に人からの視線を感じるし、悪霊も見えるようになったし、カノジョまで出来て、内容の濃い高校生活を送っている。
「でも、一緒に卒業しましょう？」
　頼もしく笑うレナちゃんに「うん」と返したけど、まだ自信はなかった。
　チュリン。
レナちゃんのバックの中から不自然に鈴が鳴った。鞄のを覗くと。小さな付喪神のもっちゃんが鞄の淵にしがみついていた。