58 / 66
58
しおりを挟む
俺はいよいよこの質問が出来ると、ちょっと緊張しながら言った。
「いつもどんな本読んでるの?」
「つまらないものよ」
意外なほどあっさり答えが返ってきた。作者とかジャンルとかそういうことが訊きたかったのに、そう思う隙も、もらえずレナちゃんは喋りだす。
「面白い小説なんかないわ。スマホでメイク動画とか都市伝説解説動画とか見てた方が楽しいに決まってるじゃない」
「じゃあ、なんで小説?」
「珍しいでしょ?」
「珍しい?」
「みんなスマホを見てる中で、一人小説を読んでる美人な女の子。それって一見目立たないけど、見つけたら珍しいって思うでしょ?実際、そう思ってたんじゃない?だから毎日なんの本を読んでいるんだろうなんて質問が思いつくのよ」
レナちゃんは、本当は目立ちたいのかな。
「面白くないことに時間を費やすって、なんかもったいなくない?」
「どうかしら。スマホはみんなで同じものを同じタイミングで見れて何人かで盛り上がったりできるけど、小説って読む速度がみんな違うからページをめくる時にずれができたりして、絶対的に個人競技になるから団体の中で一人でいたいならスマホより本を読んでた方がいいってだけ。そういうパフォーマンスなのよ。私は一人で平気です。話しかけないでって訴えてるだけ」
確かに。レナちゃんは入学当初からクラスで独立している。群れない。
「なんでそんなことするの?」
「みんなと見えてる世界が違うんだもん。みんなには見えないものが見えてる。コレって結構ストレスなのよ。あの子の守護霊は主の肩にくっついちゃっても御払いもしないなんて、なんて仕事が出来ないくせに一緒になってスマホの動画見てケラケラ笑ってたりするとムカつくし、だからっていちいち私が面倒みてたらキリがないもの」
俺のカノジョには普通の人間にはない苦労がある。そういうの半分負担してあげられないかなって思いながら肉を噛んだ。
「だから、ブンくんとパキネちゃんの関係が羨ましいの」
レナちゃんの言葉に、窓の外を見ていたパキネがレナちゃんを見つめた。
「守護霊が疫病神なんて、って初めは気の毒に思ったけど、信じられないくらい二人は仲がよくて、パキネちゃんは強力な守護で、何度も主の命を救って、暇があればたわいのない話をして、私も初めは二人の仲間に入れてくれるだけで充分だと思ってたのよ?けど、だんだん負けたくないなって思うようになるくらいブンくんが好きだって気が付いた気がしたの」
パキネが迷惑そうに溜息を吐くと、俺の分の水の入ったコップが倒れた。
「あ、ごめん、うっかりしたんよ」
「あーもう、パキネ気をつけろって」
机に広がる水を、僕とレナちゃんは慌ててナフキンで拭き取った。
「疫病神なんやもんしかたないんよ」
「その言葉便利だな」
「ごめんて」
本当に申し訳なさそうに反省するパキネは、珍しくてなんだか新鮮で可愛かった。
俺は自然とパキネの頭の上に手を置いていた。
そして気が付いた。もしこれがレナちゃんの頭だったら、俺は手を置いていないと。
「いつもどんな本読んでるの?」
「つまらないものよ」
意外なほどあっさり答えが返ってきた。作者とかジャンルとかそういうことが訊きたかったのに、そう思う隙も、もらえずレナちゃんは喋りだす。
「面白い小説なんかないわ。スマホでメイク動画とか都市伝説解説動画とか見てた方が楽しいに決まってるじゃない」
「じゃあ、なんで小説?」
「珍しいでしょ?」
「珍しい?」
「みんなスマホを見てる中で、一人小説を読んでる美人な女の子。それって一見目立たないけど、見つけたら珍しいって思うでしょ?実際、そう思ってたんじゃない?だから毎日なんの本を読んでいるんだろうなんて質問が思いつくのよ」
レナちゃんは、本当は目立ちたいのかな。
「面白くないことに時間を費やすって、なんかもったいなくない?」
「どうかしら。スマホはみんなで同じものを同じタイミングで見れて何人かで盛り上がったりできるけど、小説って読む速度がみんな違うからページをめくる時にずれができたりして、絶対的に個人競技になるから団体の中で一人でいたいならスマホより本を読んでた方がいいってだけ。そういうパフォーマンスなのよ。私は一人で平気です。話しかけないでって訴えてるだけ」
確かに。レナちゃんは入学当初からクラスで独立している。群れない。
「なんでそんなことするの?」
「みんなと見えてる世界が違うんだもん。みんなには見えないものが見えてる。コレって結構ストレスなのよ。あの子の守護霊は主の肩にくっついちゃっても御払いもしないなんて、なんて仕事が出来ないくせに一緒になってスマホの動画見てケラケラ笑ってたりするとムカつくし、だからっていちいち私が面倒みてたらキリがないもの」
俺のカノジョには普通の人間にはない苦労がある。そういうの半分負担してあげられないかなって思いながら肉を噛んだ。
「だから、ブンくんとパキネちゃんの関係が羨ましいの」
レナちゃんの言葉に、窓の外を見ていたパキネがレナちゃんを見つめた。
「守護霊が疫病神なんて、って初めは気の毒に思ったけど、信じられないくらい二人は仲がよくて、パキネちゃんは強力な守護で、何度も主の命を救って、暇があればたわいのない話をして、私も初めは二人の仲間に入れてくれるだけで充分だと思ってたのよ?けど、だんだん負けたくないなって思うようになるくらいブンくんが好きだって気が付いた気がしたの」
パキネが迷惑そうに溜息を吐くと、俺の分の水の入ったコップが倒れた。
「あ、ごめん、うっかりしたんよ」
「あーもう、パキネ気をつけろって」
机に広がる水を、僕とレナちゃんは慌ててナフキンで拭き取った。
「疫病神なんやもんしかたないんよ」
「その言葉便利だな」
「ごめんて」
本当に申し訳なさそうに反省するパキネは、珍しくてなんだか新鮮で可愛かった。
俺は自然とパキネの頭の上に手を置いていた。
そして気が付いた。もしこれがレナちゃんの頭だったら、俺は手を置いていないと。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あやかし憑き男子高生の身元引受人になりました
森原すみれ@薬膳おおかみ①②③刊行
キャラ文芸
【あやかし×謎解き×家族愛…ですよね?】
憎き実家からめでたく勘当され、単身「何でも屋」を営む、七々扇暁(ななおうぎあきら)、28歳。
そんなある日、甥を名乗る少年・千晶(ちあき)が現れる。
「ここに自分を置いてほしい」と懇願されるが、どうやらこの少年、ただの愛想の良い美少年ではないようで――?
あやかしと家族。心温まる絆のストーリー、連載開始です。
※ノベマ!、魔法のiらんど、小説家になろうに同作掲載しております

偽りの愛に終止符を
甘糖むい
恋愛
政略結婚をして3年。あらかじめ決められていた3年の間に子供が出来なければ離婚するという取り決めをしていたエリシアは、仕事で忙しいく言葉を殆ど交わすことなく離婚の日を迎えた。屋敷を追い出されてしまえば行くところなどない彼女だったがこれからについて話合うつもりでヴィンセントの元を訪れる。エリシアは何かが変わるかもしれないと一抹の期待を胸に抱いていたが、夫のヴィンセントは「好きにしろ」と一言だけ告げてエリシアを見ることなく彼女を追い出してしまう。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています

俺しか使えない『アイテムボックス』がバグってる
十本スイ
ファンタジー
俗にいう神様転生とやらを経験することになった主人公――札月沖長。ただしよくあるような最強でチートな能力をもらい、異世界ではしゃぐつもりなど到底なかった沖長は、丈夫な身体と便利なアイテムボックスだけを望んだ。しかしこの二つ、神がどういう解釈をしていたのか、特にアイテムボックスについてはバグっているのではと思うほどの能力を有していた。これはこれで便利に使えばいいかと思っていたが、どうも自分だけが転生者ではなく、一緒に同世界へ転生した者たちがいるようで……。しかもそいつらは自分が主人公で、沖長をイレギュラーだの踏み台だなどと言ってくる。これは異世界ではなく現代ファンタジーの世界に転生することになった男が、その世界の真実を知りながらもマイペースに生きる物語である。
検索エンジンは犯人を知っている
黒幕横丁
キャラ文芸
FM上箕島でDJをやっている如月神那は、自作で自分専用の検索エンジン【テリトリー】を持っていた。ソレの凄い性能を知っている幼馴染で刑事である長月史はある日、一つの事件を持ってきて……。
【テリトリー】を駆使して暴く、DJ安楽椅子探偵の推理ショー的な話。

【完結】婚約者に忘れられていた私
稲垣桜
恋愛
「やっぱり帰ってきてた」
「そのようだね。あれが問題の彼女?アシュリーの方が綺麗なのにな」
私は夜会の会場で、間違うことなく自身の婚約者が、栗毛の令嬢を愛しそうな瞳で見つめながら腰を抱き寄せて、それはそれは親しそうに見つめ合ってダンスをする姿を視線の先にとらえていた。
エスコートを申し出てくれた令息は私の横に立って、そんな冗談を口にしながら二人に視線を向けていた。
ここはベイモント侯爵家の夜会の会場。
私はとある方から国境の騎士団に所属している婚約者が『もう二か月前に帰ってきてる』という話を聞いて、ちょっとは驚いたけど「やっぱりか」と思った。
あれだけ出し続けた手紙の返事がないんだもん。そう思っても仕方ないよでしょ?
まあ、帰ってきているのはいいけど、女も一緒?
誰?
あれ?
せめて婚約者の私に『もうすぐ戻れる』とか、『もう帰ってきた』の一言ぐらいあってもいいんじゃない?
もうあなたなんてポイよポイッ。
※ゆる~い設定です。
※ご都合主義です。そんなものかと思ってください。
※視点が一話一話変わる場面もあります。
最後の封じ師と人間嫌いの少女
飛鳥
キャラ文芸
封じ師の「常葉(ときわ)」は、大妖怪を体内に封じる役目を先代から引き継ぎ、後継者を探す旅をしていた。その途中で妖怪の婿を探している少女「保見(ほみ)」の存在を知りに会いに行く。強大な霊力を持った保見は隔離され孤独だった。保見は自分を化物扱いした人間達に復讐しようと考えていたが、常葉はそれを止めようとする。
常葉は保見を自分の後継者にしようと思うが、保見の本当の願いは「普通の人間として暮らしたい」ということを知り、後継者とすることを諦めて、普通の人間らしく暮らせるように送り出そうとする。しかし常葉の体内に封じられているはずの大妖怪が力を増して、常葉の意識のない時に常葉の身体を乗っ取るようになる。
危機を感じて、常葉は兄弟子の柳に保見を託し、一人体内の大妖怪と格闘する。
柳は保見を一流の妖怪退治屋に育て、近いうちに復活するであろう大妖怪を滅ぼせと保見に言う。
大妖怪は常葉の身体を乗っ取り保見に「共に人間をくるしめよう」と迫る。
保見は、人間として人間らしく暮らすべきか、妖怪退治屋として妖怪と戦うべきか、大妖怪と共に人間に復讐すべきか、迷い、決断を迫られる。
保見が出した答えは・・・・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる