おれの守護霊疫病神。隣の席は巫女だし邪神と戦う準備できた

根本美佐子

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 今まで何度もパキネの悪戯でスマホのアラームを止められて、寝坊する危険があるから、俺の部屋にはアナログのベルが爆音で鳴るタイプの目覚まし時計も設置していた。
 初デートだし、絶対遅刻したくなくて、スマホのアラームを五分置きにセットした。
「そんなに厳重にしなくても、意地悪せんよ?」
 スマホを見ていた俺のオデコに、正面からパキネはオデコを強く打ち付けてきて不機嫌そうにしていた。
「でも、お前中学の修学旅行の日、勝手に目覚まし止めたよな?」
「あーまー……そんなこともあったね」
「バス出発する寸前だったし、クラスメイトからは笑われるし、滅茶苦茶恥ずかしかったんだからな?」
「でも間に合ったじゃん!」
「母さんが起こしてくれたからな!」
「そんなに私が目覚ましの邪魔すると思うならお母さんに起こしてって頼んでおけば?」
 頼みたい気もするけど、そもそも母さんは昔から低血圧で目覚めが悪く、俺より早く起きられるとは殆どない。いつしか俺は、母さんを起こさないように学校に行くようになったくらいだ。それに母さんは楽天家でちょっとデリカシーがないタイプ。初デートに行くなんて言ったらからかわれるのは目に見えている。
「俺の母さんは座敷童ってきいて一緒に家にパキネを連れて帰るような母さんだぞ?」
「だから?」
「能天気なんだよ」
「ひどーい!」
 パキネは俺の母さんのことが大好きだ。俺がまだ小学生に上がる前は、よくパキネについて質問してきた。好きな食べ物、この家でお気に入りの場所、どんな見た目で、どんなことを俺と話すのか、いつも興味津々だった。
 今はもう、そんな話はしなくなったけど、パキネがこの家で一番好きな俺の部屋のバルコニーをよく掃除してくれている。
けど、座敷童だと思ってたのが、俺の守護霊で疫病神だって知ったら、どういう対応をするんだろうと何回か気にしたこともあった。まぁ、仲良しなら御払いに行く必要はないとか言いそうなタイプなのだけど、まだ家のどこかに座敷童がいて我が家が幸せでいられていると思っている母さんに本当のことなんて俺からは言えなかった。
「なぁ、パキネは疫病神だけど、神だろ?」
「うん」
「座敷童って神?」
「ううん。妖怪」
「その、妖怪と神の違いってどう違うの?」
「うんとねぇ、妖怪は前世がないんよ。あと物が古くなったり壊れたりすると生まれるんだよね。その点、神とか天使は前世があるんよ。元は人間ってこと」
「でも付喪神は神だけど妖怪なんだよな?」
「あー、付喪神は車の免許と二輪の免許両方持ってるみたいな感じ」
 わかりやすい例えのような、そうでもないような……。
「死んだらわかるから」
 パキネは笑顔でそういうと、俺が並べてやった座布団の上で眠った。
 可愛い寝顔だ。安らかで健やかで、神々しいとさえ思う。疫病神だからあながち神々しいも間違いじゃないけど、いつも触れるのが恐れ多くなるほど眠った姿は美しく、禁忌のような気持ちになって、一緒に寝くなってから触れたことは記憶にない。
 俺の小指が一本入りそうなくらい小さく口を開けて眠るパキネの唇はいつも艶があって血色もよくて、触れることが許されるのなら、この唇でキスして触れてみたかった。
 レナちゃんにもしキスしようなんて今後言われたら、どうしよう。
 パキネの目の前でそんなこと出来るか?
 また新たな悩みを思いついてしまって、部屋の電気を消しても、デート前日の今夜は、上手く眠れなかった。
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