上 下
50 / 66

50

しおりを挟む
 今は慣れたけど、真冬だろうとパキネは薄い布の灰色のワンピースみたいな短いスカート丈の着物を着ていて、昔は寒くないのか?って心配してたけど、守護霊は気温に鈍感らしく、寒くないのだという。
 逆にルキもこの暑さで、上下厚手の白の学ランを着ているし、暑苦しい恰好でも別に暑くて耐えられないみたいな思考は持っていのだろう。
 クラスの誰かに気が付かれるかもしれないと思ったけど、俺はパキネの寄り掛かる窓ガラスをカーテンで覆い、二十センチくらい窓を開けた。
 灼熱の風が、少しだけ僕とレナちゃんの髪の毛をなびかせた。
「ありがとう」
「こんなに暑い日なのに室内で凍えるなんて変だから、気にしない方がいいよ」
「うん」
 レナちゃんと俺が恋人同士になってから、パキネは今まで隙あればしていた悪戯のような不幸を僕にしなくなった。その代わりに増えたことがある。
 放課後。いつものように二人で並んで家路を歩いている間、昔のことをよく話すようになった。俺が覚えていることも、俺が忘れてしまったことも、ご機嫌で語るのだ。
ただ、話が終わると名残惜しそうにしているのに、ニカッと笑って「早く邪神倒そう」と取ってつけたみたいに言うのだ。
俺は「そうだな」というけど、世の中に漂っている見た目は可愛い悪霊を退治して、修行を積むしかなかった。
悪霊も人に憑りつけば、人を殺してしまうほどの存在なのだと、電車に飛び込もうとした男性を救った時、死にたいって気持ちを思い知るほど危険なものなのだと無視できなくなった。
初めは悪霊を退治するのに『嫌だったことを思い出す』という感情のコントロールをしていたけど、最近は『これから起こったら嫌だな』ってことを思うだけでも悪霊を退治できるとわかって、俺は『パキネが見えなくなったら嫌だ』とか『パキネと話せなくなったら嫌だ』とかそう思うだけでも悪霊を退治できるようになった。
けど、パキネは俺がまだ『昔あった嫌なこと』だけで悪霊を退治していると思っている。本当は違うって言ってやりたい気持ちもあったけど、レナちゃんの恋人になった俺に、パキネが遠慮して過ごしてくれているのがわかるから、パキネの努力を簡単に無駄にしてもいいのか迷いが出て、言えなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

香死妃(かしひ)は香りに埋もれて謎を解く 

液体猫(299)
キャラ文芸
 香を操り、死者の想いを知る一族がいる。そう囁かれたのは、ずっと昔の話だった。今ではその一族の生き残りすら見ず、誰もが彼ら、彼女たちの存在を忘れてしまっていた。  ある日のこと、一人の侍女が急死した。原因は不明で、解決されないまま月日が流れていき……  その事件を解決するために一人の青年が動き出す。その過程で出会った少女──香 麗然《コウ レイラン》──は、忘れ去られた一族の者だったと知った。  香 麗然《コウ レイラン》が後宮に現れた瞬間、事態は動いていく。  彼女は香りに秘められた事件を解決。ついでに、ぶっきらぼうな青年兵、幼い妃など。数多の人々を無自覚に誑かしていった。  テンパると田舎娘丸出しになる香 麗然《コウ レイラン》と謎だらけの青年兵がダッグを組み、数々の事件に挑んでいく。  後宮の闇、そして人々の想いを描く、後宮恋愛ミステリーです。 ⚠最新話投稿の宣伝は基本しておりませんm(。_。)m

【完結】非モテアラサーですが、あやかしには溺愛されるようです

  *  
キャラ文芸
疲れ果てた非モテアラサーが、あやかしたちに癒されて、甘やかされて、溺愛されるお話です。

バツ印令嬢の癒し婚

澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
鬼と対抗する霊力を持つ術師華族。 彼らは、その力を用いてこの国を鬼の手から守っている。 春那公爵家の娘、乃彩は高校3年であるにもかかわらず、離婚歴がすでに3回もあった。 また、彼女の力は『家族』にしか使えない。 そのため学校でも能なし令嬢と呼ばれ、肩身の狭い思いをしていた。 それに引き換え年子の妹、莉乃は将来を有望視される術師の卵。 乃彩と莉乃。姉妹なのに術師としての能力差は歴然としていた。 ある日、乃彩は学校の帰り道にとてつもなく強い呪いを受けている男性と出会う。 彼は日夏公爵家当主の遼真。このまま放っておけば、この男は近いうちに確実に死ぬ。 それに気づいた乃彩は「結婚してください」と遼真に迫っていた。 鬼から強い呪いをかけられ命を奪われつつある遼真(24歳)&『家族』にしか能力を使えない能なし令嬢と呼ばれる乃彩(高3、18歳) この結婚は遼真を助けるため、いや術師華族を守るための結婚だったはずなのに―― 「一生、側にいろ。俺にはおまえが必要だ」離婚前提の結婚から始まる現代風和風ファンタジー

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

野望を秘めた面首の愛は、我が身を蝕む毒となる~男後宮騒動記~

香久乃このみ
キャラ文芸
既に70歳を超えた太后の蓮花。息子である病弱な皇帝とまだ幼い孫を勢力争いから守るため、若さと長生きを切望していた。そこへ現れた女道士の青蝶は、蓮花に「男の陽の気を受け取るたびに若返る術」をかける。72から36、ついには18になってしまった蓮花。しかしそのタイミングで、陽の気を捧げさせるために宰相傑倫が育成していた面首たちの、宮殿での仕事が開始される。次に事を行えば9歳になってしまう、それだけは避けなくてはならない。出世を目指し蓮花の愛を手に入れんとする男後宮の面首たちと、それを躱す蓮花の甘くもトタバタな日々が始まった。

厄彩祓い

翠晶 瓈李
キャラ文芸
〈厄彩祓い〉(ヤクサイ ハライ) 彩の霊光よ、集え───。 怪異に潜む厄彩を清める者、祓う者たちのお話。

神様達の転職事情~八百万ハローワーク

鏡野ゆう
キャラ文芸
とある町にある公共職業安定所、通称ハローワーク。その建物の横に隣接している古い町家。実はここもハローワークの建物でした。ただし、そこにやってくるのは「人」ではなく「神様」達なのです。 ※カクヨムでも公開中※ ※第4回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。ありがとうございます。※

梅子ばあちゃんのゆったりカフェヘようこそ!(東京都下の高尾の片隅で)

なかじまあゆこ
キャラ文芸
『梅子ばあちゃんのカフェへようこそ!』は梅子おばあちゃんの作る美味しい料理で賑わっています。そんなカフェに就職活動に失敗した孫のるり子が住み込みで働くことになって……。 おばあちゃんの家には変わり者の親戚が住んでいてるり子は戸惑いますが、そのうち馴れてきて溶け込んでいきます。 カフェとるり子と個性的な南橋一家の物語です。 どうぞよろしくお願いします(^-^)/ エブリスタでも書いています。

処理中です...