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「レナ。またよろしく。あとブン、そのハンカチ大切にした方がいいよ」
「そのつもりだよ」
「いや、マジで。付喪神がついてた物ってめっちゃ霊力溜まってるから、悪霊とか邪神が出た時に、お守り的なアイテムになるから肌身離さず持ってな」
「わかった」
 ん?今、邪神って言った?
「ちょ、もっちゃん邪神知ってるの?」
「知ってるっていうか、この高校には邪神の気配かんじるっつーか。あんた守護霊疫病神なんだから、邪神からバトルしかけられてんじゃない?ウチ、付喪神って神だけど結局は妖怪だからさ、邪神も元をただせば妖怪だから、気配とかわかるんだよね!」
 マジか。
パキネは気に喰わなそうにもっちゃんを見つめていた。けど、ルキはポンコツと言われたのがショックだったのか、さっきからずっと『え?』って顔で微動だにしていなかった。
「その点、疫病神は邪神のエサみたいなもんだから、邪神が何処にいるかもわからないよねー。マジウケる。昔は邪神の親戚か!ってくらいの仲だったのに今じゃエサみたいなもんだもんね」
 パキネは何も言い返さず、唇をムニュっと突き出して、不貞腐れた。
「じゃあ、もっちゃんは邪神が近くに居たら、私に知らせてくれる?」
 鈴を手のひらに置いて、レナちゃんはもっちゃんに言うと、優しく微笑んだ。
「レナはハンカチも大切にしてくれてたし、この鈴も大切にしてくれるって言うんなら、邪神が近くに来た時、教えてあげてもいいよ!」
「ほんと?凄く助かるわ。もっちゃん、ありがとう。大切にするわ。鈴は私のお財布に付け替えさせてもらってもいいかしら?」
「おっけー!」
 レナちゃんが鞄から、朱色の小さな折り畳み財布を取り出し、ファスナーの取っ手に鈴をつけた。
「ねぇブンくん」
「ん?」
 俺の名前を呼んだのに、レナちゃんは、俺の後ろに立っているパキネに視線を向けていた。敵意も、敬意も、友好的でもない、ただちょっと三秒に感じる一秒ってくらいの短さで、パキネを見て、すぐに俺に視線を変え、首をカクンと左に傾けて、レナちゃんは言った。
「私たち、恋人になりましょう?邪神を察知できるのはパキネさんじゃなくて私のモノになったこの鈴の中のもっちゃんだもの。なるべく一緒に居たいの。どうかしら?」
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