上 下
45 / 66

45

しおりを挟む
 窓から入る日差しがレナちゃんの白い肌を輝かせていた。多分、レナちゃんから俺は逆光で暗く見えているんだろうなって、ぼんやり思った。
 俺はポケットに手を突っ込んだ。出てきたのは何日か前に行ったコンビニのレシートだけで、鞄の中にも隅々まで何か大切にしていたようなものがないか調べた。
 だけど、新品の教科書に返された小テストくらいしか出てこなかった。
「あ、ウチそれにだったら憑りついてやってもいいよ」
 そうもっちゃんが指を刺したのは財布だった。けれど、この財布は高校の入学祝に年の離れた従兄弟のお姉さんにもらった新品同様のものだった。
「財布?」
「それについてる鈴のキーホルダー」
 財布に鈴をつけているのは、パキネが悪戯に財布を隠すから、見つけやすいように、小学生の時に百均で買ってつけたものだった。二センチもないくらいのただの鈴で金のメッキも剥がれて綺麗とは言えないけど、もっちゃんはそれが気に入ったらしい。
「じゃあ、これにもっちゃんが憑りついて、それをレナちゃんにプレゼントすればいいってこと?」
「そーそー。レナもさ、もう誰にもウチのこと取られたくないなら、もらった後に鈴に血をつけるといいよ。そしたらウチらずっと一緒だから」
 随分物騒なこと言うなぁと思っていたけど、レナちゃんの手からヒョイっと飛び立ち、もっちゃんは鈴に触れると姿が消えた。
 揺らしてないのに鈴がチュリンと鳴った。
「上手く憑りつけたから、ブンだっけ?あんたこの鈴レナにプレゼントしてよ」
 拒否権はないなと思った。俺がハンカチに血をつけてしまったせいで、何日も野良付喪神をやらせてしまった罪悪感もあるし、レナちゃんがもっちゃんを気に入っているし、別に物凄く思い入れがあるわけじゃないけど、十年近く使っていた鈴に少しだけ愛着があったのは確かだった。
 俺は財布から鈴を取り外して、レナちゃんに差し出した。
「ありがとう。そのハンカチ、よかったらもらってくれる?この鈴と交換子ってことでいいかしら?」
「ハンカチもらっちゃっていいの?」
「いいの。大切にしてたけど、ブンくんの役に立ててよかったって思ってるから」
「なんかごめんね」
「いいのよ」
 レナちゃんはうっとりと鈴を見つめ、俺の手からそっと鈴を受け取った。
 すると、もっちゃんが鈴から上半身だけ出てきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「きみは強いからひとりでも平気だよね」と婚約破棄された令嬢、本当に強かったのでモンスターを倒して生きています

猫屋ちゃき
恋愛
 侯爵令嬢イリメルは、ある日婚約者であるエーリクに「きみは強いからひとりでも平気だよね?」と婚約破棄される。彼は、平民のレーナとの真実の愛に目覚めてしまったのだという。  ショックを受けたイリメルは、強さとは何かについて考えた。そして悩んだ末、己の強さを確かめるためにモンスター討伐の旅に出ることにした。  旅の最中、イリメルはディータという剣士の青年と出会う。  彼の助けによってピンチを脱したことで、共に冒険をすることになるのだが、強さを求めるためのイリメルの旅は、やがて国家の、世界の存亡を賭けた問題へと直結していくのだった。  婚約破棄から始まる(?)パワー系令嬢の冒険と恋の物語。

修行大好き魔王様、異世界でもみっちり修行して世界を回るそうです

ねっとり
ファンタジー
この世のありとあらゆる魔法……根源魔法から禁忌とされたどんな魔法も全て極めた人間がいた。 その者は周りから魔法を極めた王様……つまり魔王と呼ばれ畏怖された上に世界を征服するまでに至った。 しかし征服したとしても、城の中には使用人すらおらず、ただ一人暇を持て余しながら過ごす……退屈な日々。 その暇潰しに転生することを決意する。魔王がいた世界の創造神でもある女神を訪れ、今まで自分が関わってこなかった世界に生まれようと優しくお願いして世界座標を手に入れた。 転生する世界は今までと違い魔物や魔獣に亜人などもいる世界。 知識欲もある魔王は、新しい世界をどう楽しもうかワクワクしながら転生するのであった。

俺と彼女は捻くれた青春にその意義を追い求める。

のみかん
キャラ文芸
人は彼を『渡り鳥』と、そう呼んだ……(嘘)。 十六年間の人生の中で、幼稚園三つ小学校三つ中学校三つとメジャーリーグばりの移籍を繰り返してきた小鳥遊泰正は、父親の海外赴任をきっかけに定住の地を手に入れる。 しかし、新たな家から、新たな高校に通う日の朝、彼は出会ってしまった。 隣の部屋に住む銀髪碧眼の引きこもり、偶然にも同じ苗字を持った少女……小鳥遊由海という同級生に。

神様に愛されてる巫女のわたしはずっと悪神に恋してる。 ー 隠れ子と鬼と神隠しの巫女 ー

雨野 美哉(あめの みかな)
キャラ文芸
M県Y市にある西日野神社の巫女、西日野珠莉は、烏鷺慈雨由良波斯射大神という神の寵愛を受けていた。 そんな彼女の前に、初恋の相手であるウロジューユ・ラハ・スィーイという少年が現れ、巫女と神、そして悪神の、手に汗握り血で血を洗う三角関係が始まる。

30歳、魔法使いになりました。

本見りん
キャラ文芸
30歳の誕生日に魔法に目覚めた鞍馬花凛。 『30歳で魔法使い』という都市伝説を思い出し、酔った勢いで試すと使えてしまったのだ。 そして世間では『30歳直前の独身』が何者かに襲われる通り魔事件が多発していた。巻き込まれた花凛を助けたのは1人の青年。……彼も『魔法』を使っていた。 そんな時会社での揉め事があり実家に帰った花凛は、鞍馬家本家当主から思わぬ事実を知らされる……。 ゆっくり更新です。 1月6日からは1日1更新となり

のろいたち〜不老不死の陰陽師の物語〜

空岡
キャラ文芸
ポルターガイストに悩まされていたレイン・カルナツィオーネは、ジャポネの陰陽師ヨミと出会う。 ヨミは自分の不老不死の呪いを解くために旅をしており、身寄りのないレインはヨミの弟子になることに。 旅を共にするにつれ、ヨミの生い立ちを知り、レインもまた、ヨミの運命の輪に巻き込まれていく。 ヨミとレインの、不老不死を巡る旅路の果ての物語。

俺様当主との成り行き婚~二児の継母になりまして

澤谷弥(さわたに わたる)
キャラ文芸
夜、妹のパシリでコンビニでアイスを買った帰り。 花梨は、妖魔討伐中の勇悟と出会う。 そしてその二時間後、彼と結婚をしていた。 勇悟は日光地区の氏人の当主で、一目おかれる存在だ。 さらに彼には、小学一年の娘と二歳の息子がおり、花梨は必然的に二人の母親になる。 昨日までは、両親や妹から虐げられていた花梨だが、一晩にして生活ががらりと変わった。 なぜ勇悟は花梨に結婚を申し込んだのか。 これは、家族から虐げられていた花梨が、火の神当主の勇悟と出会い、子どもたちに囲まれて幸せに暮らす物語。 ※3万字程度の短編です。需要があれば長編化します。

花恋保育 クイズ

未来教育花恋堂
キャラ文芸
幼児とのコミュニケーション

処理中です...