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 あれから、俺は日常的に悪霊が見えるようになったんだけど、悪霊は信じられない程、そこら中にいた。でも、冬のフクロモモンガみたいに可愛らしい瞳をしていて、なんだか悪霊っぽくないフォルムで、本当に触れたら憑りつかれたり厄を呼び起こすとかそんなことをするようには見えなかった。
「ブン、悪霊見つけたらなるべく倒さんといかんよ?じゃないと生気をコントロールできないままやもん。しっかりしてよ?」
 駅のホーム。黄色い線の内側。俺はそれより更に一歩後ろに立ってた。うっかり線路に荷物を落としたりしたくないし、人に迷惑をかけるのは嫌いで、パキネの悪戯から一応自衛しているつもりだった。
「でもさ、結局のとこ俺って悪霊が見えるようになって御祓いが出来るようになっただけなんだよな?そもそも邪神ってどんな姿なわけ?」
「姿は私も噂程度でしか聞いたことないからわなんよ?だけど、邪神は七体それぞれが別の色の邪気を放ってるみたい」
「じゃあ案外カラフルってこと?」
「そうなるね。でも、大中様々な大きさと容姿で、気を付けてないと人間に見える個体もいるって話らしいんよ」
「じゃあ、可愛いかったりするのかな?」
「なんでそう思うん?」
 パキネが疫病神なのに可愛いからだなんて恥ずかしくて言えなかった。
「別に。悪霊が想像してたより可愛かったからさ……」
「そうでもないかもしれんよ」
 パキネが視線をやった先には、黄色い線の内側にいないスーツ姿の男性が立っていた。
「は?っちょ、あの人の守護霊は何してんだよ!」
「守護霊がついてない人だっているんよ。でも、あの人全体に悪霊がまとわりついてるの。わかる?」
 悪霊?背中に灰色の炎みたいのがくっついているけど、悪霊はこのかわいいフクロモモンガみたいな綿じゃないのか?
「人に憑りついて生気を奪う。それが悪霊の真の姿なんよ」
 上り電車が吠えるように警笛を鳴らしていた。
 スーツの男性は、電車なんて見ていなかった。ちょっと上を向いて、片足が線路に向かっていて、落ちると思った。
「クソが!」
 体が動いていた。見過ごせなかった。っていうか目の前で人が死ぬところなんて見たくなかった。
「ちょ、待った!まだブンにあんな大きな悪霊の除霊なんて無理だから!あたしがッ!」
昨日今日手に入れた力になんて頼る選択肢は俺になかった。
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