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窓から強く入ってきた春風に吹かれながら、パキネが振り返って俺に笑いかけた。
「いつまでも傍にいるから、絶対あたしのこと忘れないって誓ってくれるなら教える」
「忘れるもなにも、俺たちずっと一緒だろ」
これからだってずっと一緒だ。当たり前だ。ずっと一緒にいたんだから。
俺は本気で、その時はそんなことを思っていた。
「……そやね!じゃあ、教える!」
パキネが小説を読んでいたレナちゃんの腕を掴んで、無理やり立たせた。
「ちょ、っと。どうしたのかしら?」
いつもすましているレナちゃんも、初めてパキネに触れられて動揺していた。
「まずは御祓いの仕方から!癪だけどレナに教わって!」
「え?」
「は?」
戸惑う強くならなきゃいけない俺と、巫女のレナちゃん。ふざけるな!と横で叫ぶ天使のルキと、悪戯に笑う疫病神のパキネ。俺たちは出会わないといけない運命だったんだって、その時わかった気がした。
☆☆☆
子供の頃、凄く小さかった。背の順で並ぶといつも一番前だった。意味もなく振り返ると、先生に注意された。俺の後ろにはどんな奴が、並んでいるのかとかわからなかった。それが凄く嫌だった。誰かから後頭部を見られている。それが凄く嫌だった。
ズルいと思っていた。背が高いと、前の奴らを見渡す権利があって、前にいる人間には振り返る権利が与えられないことが、とにかく嫌だった。
こんな感じだろうか。
「いいと思う」
そう言ったレナちゃんが連れてきてくれたのは、弓美家が管理している御寺の境内だった。床にはホコリ一つもなく、綺麗に磨き上げられた木の床だった。でも、体育館の木とは全然違う、もっと深みのある黒に似た木の床に、俺は正座させられていた。
俺はさっき頭で考えさせられた『嫌だったこと』や『根に持っていること』などをレナちゃんとパキネとルキに届くように頭の中で話していた。
「自分の中にある負の感情は、体の中の毒。その毒を上手く悪霊に当てさえすれば、悪霊は消滅するの。凄くシンプルでしょ?」
「いや、考えただけで、当てるっていうのはどうやってやればいいの?」
「タイミングかしら。悪霊の御祓いなんて自分から行かなくても、歩いていて誰かと肩がぶつかったみたいなものだから、そのぶつかった相手に舌打ちするかしないかくらいのものよ?」
「いつまでも傍にいるから、絶対あたしのこと忘れないって誓ってくれるなら教える」
「忘れるもなにも、俺たちずっと一緒だろ」
これからだってずっと一緒だ。当たり前だ。ずっと一緒にいたんだから。
俺は本気で、その時はそんなことを思っていた。
「……そやね!じゃあ、教える!」
パキネが小説を読んでいたレナちゃんの腕を掴んで、無理やり立たせた。
「ちょ、っと。どうしたのかしら?」
いつもすましているレナちゃんも、初めてパキネに触れられて動揺していた。
「まずは御祓いの仕方から!癪だけどレナに教わって!」
「え?」
「は?」
戸惑う強くならなきゃいけない俺と、巫女のレナちゃん。ふざけるな!と横で叫ぶ天使のルキと、悪戯に笑う疫病神のパキネ。俺たちは出会わないといけない運命だったんだって、その時わかった気がした。
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子供の頃、凄く小さかった。背の順で並ぶといつも一番前だった。意味もなく振り返ると、先生に注意された。俺の後ろにはどんな奴が、並んでいるのかとかわからなかった。それが凄く嫌だった。誰かから後頭部を見られている。それが凄く嫌だった。
ズルいと思っていた。背が高いと、前の奴らを見渡す権利があって、前にいる人間には振り返る権利が与えられないことが、とにかく嫌だった。
こんな感じだろうか。
「いいと思う」
そう言ったレナちゃんが連れてきてくれたのは、弓美家が管理している御寺の境内だった。床にはホコリ一つもなく、綺麗に磨き上げられた木の床だった。でも、体育館の木とは全然違う、もっと深みのある黒に似た木の床に、俺は正座させられていた。
俺はさっき頭で考えさせられた『嫌だったこと』や『根に持っていること』などをレナちゃんとパキネとルキに届くように頭の中で話していた。
「自分の中にある負の感情は、体の中の毒。その毒を上手く悪霊に当てさえすれば、悪霊は消滅するの。凄くシンプルでしょ?」
「いや、考えただけで、当てるっていうのはどうやってやればいいの?」
「タイミングかしら。悪霊の御祓いなんて自分から行かなくても、歩いていて誰かと肩がぶつかったみたいなものだから、そのぶつかった相手に舌打ちするかしないかくらいのものよ?」
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毎日投稿をこころがけ、一月中に完結させて!キャラ文芸大賞がとれるように頑張ります!男性向けとしていますが、女性も楽しめる内容になっています!一巻分では二体の邪神を倒し、最終的には七体の邪神を全部倒しながら、恋愛ファンタジーとして長編小説となります。書籍化、コミカライズ化、メディアミックス大歓迎です!応援よろしくお願いします!
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