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 レナちゃんの方は天使がついているだけあって、初めこそ、美人なレナちゃんに嫉妬していた女子たちも、天使が女子達に片っ端から息を吹きかけまっくたおかげで、いつしか、レナちゃんを嫌うと、他の男子からの印象が悪くなると女子達は気が付きはじめ、レナちゃんをハブいたり、陰口をいう女子はいなくなっていた。
 パキネとルキの話によると、どうやらクラスでリーダーシップを発揮しつつある、カースト一位の男子の守護霊には元お笑い芸人の男がついていて、女子の方には明治時代に位の高い勝気な貴婦人の守護霊がついていているから、この二人を中心に物事を進めていけば、とても平和なクラスで一年を過ごせるだろうという話だった。
 だから、安心していたのに、掃除の時間にまた俺は大きな厄に襲われた。
 俺はその日、階段掃除だったから教室のロッカーからT字のホウキを持って、階段を四階から二階まで掃除をしていた。
 すでにサボっている生徒がたくさんいたし、そんなに汚れが目立つようなところはないくらい、うちの高校は歴史が浅く、新設校と言っていい程きれいなのだが、俺は高校初日に全校ニュースになるほど有名になってしまった手前、下手にサボることも出来なかったのだ。本来の俺なら、多分サボってるか、物凄く手を抜いていただろう。
 教室のある三階についた時だった、階段を上りきったところで、俺よりガタイの良い男子とぶつかった。
 手すり!一瞬の出来事の中でバランスを崩しながら、そう思ったけど、階段のド真ん中を歩いていた俺の手は両サイドの手すりのどちらにも手が届かず、体は背中が何かに引っ張られるみたいに、俺は階段を転げ落ちそうになった。
「守護!厄を祓う!」
 そうパキネが叫んだ時には、もう階段を転げ落ちてしまった。
 でも、階段を落ち切った時、俺の頭だけはパキネの胸に収まっていて、無事だった。
「うわ!やっべ!」そう言って逃げようとした、男子三人にパキネが短く息を吐くと、すぐに一部始終を見ていた先生が現れ、彼らは逃走に失敗し捕まった。
「簡単に……はぁ、はッ……逃がさんよ!」
 パキネは、息を切らしながら男子三人を睨み続けていた。
 俺は柔らかい胸の中から、頭を起こした。だけど、俺を抱きしめていたパキネは、俺が起き上がろうと大勢を変えても、まだ強く俺の上半身を抱きしめていた。
「パキネ?」
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