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「こんなに大怪我につながるような不幸が続くなんて、パキネさんも言ってたけど、なんだか変だわ」
 そうだろうか。パキネの吐息で起きる嫌がらせの方が、ムカつく。でも、そうか、俺に悪戯してるのはパキネが勝手にやっているだけで、パキネが起こしている不幸とはまた別物の不幸が俺に立て続けに起こっているってことになる。
 本当に、ただの厄日だろうか。
 誤って矢を放ってしまった先輩が申し訳なさそうにしている中、俺とレナちゃんは保健室に向かった。血は垂れてくるけど、痛みはそれほどでもない。
 でも、頬のガーゼに触れて、心細くなった。
 パキネはぐったりとした状態で、ルキにお姫様抱っこされていて、逆に俺はレナちゃんに肩を借りて歩いていた。
 俺にとって、パキネが他の誰かに抱えられていることがこんなに屈辱的に感じるなんて思っていなかった。
たまたまではあるけど、俺は女の子に常に守られている。それが大人になるにつれ嫌だなって思うようになったのは、多分、俺は非力な人間だと思い知らされるからだ。
守ってもらってばかりで、俺はパキネに何かお礼が出来るわけじゃない。神様だからお酒が飲みたいというけど、俺はまだ未成年。家族で誰もお酒を飲まないからお供えすることも、まだ出来ない。ってかパキネの見た目じゃ、まだ二十歳は絶対過ぎていない。俺と同じ十五歳くらいの女の子にしか思えないし、お供えも物凄く切望してくるわけでもないから、本当に何かしてあげられることってない。
だったらせめて弱っている時くらい、俺が抱えて歩きたかった。この前の車が突っ込んで来たあとは、おんぶで帰ったけど、俺だってパキネをお姫様抱っこくらい出来る。
俺とパキネは一緒にいすぎて、俺が恥ずかしいと思ったことは何も出来ないでいるだけだ。
中学三年生の受験前、俺はインフルエンザになった。でも、パキネも具合が悪かったみたいで、部屋の片隅で震えてうずくまっていた。まるで一緒に風邪と戦っているみたいだった。何度もベッドに入ってきてもいいよと言ったけど「スケベ」って真っ赤な顔で言われたのを覚えている。
そんな強がり言うなって言い返したけど。パキネは眠ってしまった。
あの時、守護霊として俺の中のウイルスとパキネは戦ってくれていたんだと思う。
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