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 俺の横で、パキネがスーゥと息を飲む音がしたので、邪魔される前に俺は、頭の中で「パキネ。邪魔したらレナちゃんに御祓いしてもらうぞ」と脅すと「ん!」と、パキネは息を飲んだ。同じく息を吹きかけようとしていたルキはレナちゃんにパチン!と容赦なくビンタされてた。その躊躇のなさにちょっとビックリした。ルキが見えている人がいないから、はた目には、ただ手で空を切ったようにしか見えないし、そういうことはしないのかと思ったけど、やる時はやるのか、と驚いた。
 もっとも、天使の方も滅茶苦茶「ええ……」と驚いているようだった。
 レナちゃんと電話番号とラインを無事に交換したら、担任の先生が教室に入っていたので、俺たちはスマホをポケットにしまった。
 横で不貞腐れているパキネが俺の手を握ってきた。
 パキネは可愛い。凄く好みの顔だ。四六時中一緒にいるし、物心ついた時から、ずっとそばにいてくれる大切な存在。不幸ばっかり呼び寄せるけど、俺のことちゃんと守ってくれる時もある。
 俺だって思春期。今まではなかったけど、これから恋の一つや二つ経験することがあるかもしれない。でも、パキネより可愛い子は見たことがない。だけど、レナちゃんを見て美人だと思ったのも確かだ。
 レナちゃんも守護霊が見える、俺と同じちょっと特殊な人。だから仲良くなりたいとも思う。
 でも、中学生に上がる頃、パキネは思春期に入る俺に、弱々しく警告してきたのを今でも覚えている。普段、自信家でポジティブで、俺の悩みなんていつも笑い飛ばしてくれていたのに、本当に泣き出すんじゃないかってくらい心細そうに言ってきたのだ。
俺が恋をすると、パキネがどんなに傍にいてくれても、俺はパキネが見えなくなってしまうらしい。そんなのってあんまりだろうって俺だって思った。
 だから、俺はその時「恋なんかしないよ」と言った。その言葉をきっとパキネは今も信じているんだと思う。俺にとってはパキネが世界で一番可愛い女の子で、仮に恋のライバルが出来たって、負けないって、俺のことを信じていてくれている。
 俺たちは別に恋人同士じゃないけど、本当に小さな時からずっと一緒にいて、誰よりも長い時間を過ごしてきた。
 見えなくなってしまったら、悲しいじゃ済まないのだ。
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