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パキネが深い吐息を吐くたび、俺には小さな不幸が訪れ、部活を三年間続けること自体が日々苦行だった。
でも、パキネにとってそれは悪戯の範囲。故意にやっているけど、不思議とイジメだとは思わなかった。パキネ以外の奴に嫌がらせをされたところで、パキネ以上の完全犯罪のような誰のせいにもできない不幸の積み重ねで生きている俺とっては、鼻で笑い飛ばせる程度の嫌がらせしかされたことはない。だから特定の誰かにイジメられることもなかった。
でも、それはパキネが守護霊のおかげなのだ。パキネは俺に不幸をもたらすけど、同時に守護霊でもある。しかも、普通の守護霊と違って神ランクの守護霊なので、ちょっとやそっとの人間関係のいざこざとか事故とか、そういうものからはいつも守ってくれている。
だから、高校生になっても人間関係で苦労すると思っていなかった。けど、パキネにとっても誤算だったようで、俺は高校初日に、超有名人になってしまった。
入学式が終わって、下校するタイミングで、正門を出ようとした時だった。
何故か猛スピードで軽自動車が俺に向かって突っ込んできたのだ。命にかかわるような不幸や災いでも、パキネは守護霊だから俺に起こすことは出来ない。前にそう言っていたから、本当に偶然事故に巻き込まれてそうになっている、そう判断した時、横にいたパキネが「守護!厄を祓う!」と叫んで、強く息を吐きながら右腕を水平に振ると、俺の体が浮いたと同時に、突っ込んできた車の上を歩くように避け、地面に見事に着地した。
その動画がSNSで拡散され、夕方のニュースにもなった。俺は国民からスタントマン高校生とか変なあだ名をつけられた。
次の日、学校に行ったら、教室前の廊下に人が溢れ物凄く恥ずかしかった。
まだ部活紹介のオリエンテーションがあるまでは、部活勧誘してはいけないはずなのに、運動部の人から何人も声をかけられた。どこからか俺が中学ではサッカー部だったことも知れ渡り、サッカー部の顧問まで俺に挨拶という名の圧をかけてきた。
「えらいことになってますのぅ」
静かに教室の隅に座る俺の前に、隣の席の弓美レナちゃんの守護霊の天使ルキが、ニヤニヤ笑いながらそう言ってきた。
「全部パキネのせいだから」
頭の中でそうつぶやくと、左隣にいたパキネが俺の両肩を掴んで揺さぶってきた。
でも、パキネにとってそれは悪戯の範囲。故意にやっているけど、不思議とイジメだとは思わなかった。パキネ以外の奴に嫌がらせをされたところで、パキネ以上の完全犯罪のような誰のせいにもできない不幸の積み重ねで生きている俺とっては、鼻で笑い飛ばせる程度の嫌がらせしかされたことはない。だから特定の誰かにイジメられることもなかった。
でも、それはパキネが守護霊のおかげなのだ。パキネは俺に不幸をもたらすけど、同時に守護霊でもある。しかも、普通の守護霊と違って神ランクの守護霊なので、ちょっとやそっとの人間関係のいざこざとか事故とか、そういうものからはいつも守ってくれている。
だから、高校生になっても人間関係で苦労すると思っていなかった。けど、パキネにとっても誤算だったようで、俺は高校初日に、超有名人になってしまった。
入学式が終わって、下校するタイミングで、正門を出ようとした時だった。
何故か猛スピードで軽自動車が俺に向かって突っ込んできたのだ。命にかかわるような不幸や災いでも、パキネは守護霊だから俺に起こすことは出来ない。前にそう言っていたから、本当に偶然事故に巻き込まれてそうになっている、そう判断した時、横にいたパキネが「守護!厄を祓う!」と叫んで、強く息を吐きながら右腕を水平に振ると、俺の体が浮いたと同時に、突っ込んできた車の上を歩くように避け、地面に見事に着地した。
その動画がSNSで拡散され、夕方のニュースにもなった。俺は国民からスタントマン高校生とか変なあだ名をつけられた。
次の日、学校に行ったら、教室前の廊下に人が溢れ物凄く恥ずかしかった。
まだ部活紹介のオリエンテーションがあるまでは、部活勧誘してはいけないはずなのに、運動部の人から何人も声をかけられた。どこからか俺が中学ではサッカー部だったことも知れ渡り、サッカー部の顧問まで俺に挨拶という名の圧をかけてきた。
「えらいことになってますのぅ」
静かに教室の隅に座る俺の前に、隣の席の弓美レナちゃんの守護霊の天使ルキが、ニヤニヤ笑いながらそう言ってきた。
「全部パキネのせいだから」
頭の中でそうつぶやくと、左隣にいたパキネが俺の両肩を掴んで揺さぶってきた。
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