上 下
11 / 66

11

しおりを挟む
 パキネが深い吐息を吐くたび、俺には小さな不幸が訪れ、部活を三年間続けること自体が日々苦行だった。
 でも、パキネにとってそれは悪戯の範囲。故意にやっているけど、不思議とイジメだとは思わなかった。パキネ以外の奴に嫌がらせをされたところで、パキネ以上の完全犯罪のような誰のせいにもできない不幸の積み重ねで生きている俺とっては、鼻で笑い飛ばせる程度の嫌がらせしかされたことはない。だから特定の誰かにイジメられることもなかった。
でも、それはパキネが守護霊のおかげなのだ。パキネは俺に不幸をもたらすけど、同時に守護霊でもある。しかも、普通の守護霊と違って神ランクの守護霊なので、ちょっとやそっとの人間関係のいざこざとか事故とか、そういうものからはいつも守ってくれている。
だから、高校生になっても人間関係で苦労すると思っていなかった。けど、パキネにとっても誤算だったようで、俺は高校初日に、超有名人になってしまった。
入学式が終わって、下校するタイミングで、正門を出ようとした時だった。
 何故か猛スピードで軽自動車が俺に向かって突っ込んできたのだ。命にかかわるような不幸や災いでも、パキネは守護霊だから俺に起こすことは出来ない。前にそう言っていたから、本当に偶然事故に巻き込まれてそうになっている、そう判断した時、横にいたパキネが「守護!厄を祓う!」と叫んで、強く息を吐きながら右腕を水平に振ると、俺の体が浮いたと同時に、突っ込んできた車の上を歩くように避け、地面に見事に着地した。
 その動画がSNSで拡散され、夕方のニュースにもなった。俺は国民からスタントマン高校生とか変なあだ名をつけられた。
 次の日、学校に行ったら、教室前の廊下に人が溢れ物凄く恥ずかしかった。
 まだ部活紹介のオリエンテーションがあるまでは、部活勧誘してはいけないはずなのに、運動部の人から何人も声をかけられた。どこからか俺が中学ではサッカー部だったことも知れ渡り、サッカー部の顧問まで俺に挨拶という名の圧をかけてきた。
「えらいことになってますのぅ」
 静かに教室の隅に座る俺の前に、隣の席の弓美レナちゃんの守護霊の天使ルキが、ニヤニヤ笑いながらそう言ってきた。
「全部パキネのせいだから」
 頭の中でそうつぶやくと、左隣にいたパキネが俺の両肩を掴んで揺さぶってきた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

九尾の狐に嫁入りします~妖狐様は取り換えられた花嫁を溺愛する~

束原ミヤコ
キャラ文芸
八十神薫子(やそがみかおるこ)は、帝都守護職についている鎮守の神と呼ばれる、神の血を引く家に巫女を捧げる八十神家にうまれた。 八十神家にうまれる女は、神癒(しんゆ)――鎮守の神の法力を回復させたり、増大させたりする力を持つ。 けれど薫子はうまれつきそれを持たず、八十神家では役立たずとして、使用人として家に置いて貰っていた。 ある日、鎮守の神の一人である玉藻家の当主、玉藻由良(たまもゆら)から、神癒の巫女を嫁に欲しいという手紙が八十神家に届く。 神癒の力を持つ薫子の妹、咲子は、玉藻由良はいつも仮面を被っており、その顔は仕事中に焼け爛れて無残な化け物のようになっていると、泣いて嫌がる。 薫子は父上に言いつけられて、玉藻の元へと嫁ぐことになる。 何の力も持たないのに、嘘をつくように言われて。 鎮守の神を騙すなど、神を謀るのと同じ。 とてもそんなことはできないと怯えながら玉藻の元へ嫁いだ薫子を、玉藻は「よくきた、俺の花嫁」といって、とても優しく扱ってくれて――。

【完結】失くし物屋の付喪神たち 京都に集う「物」の想い

ヲダツバサ
キャラ文芸
「これは、私達だけの秘密ね」 京都の料亭を継ぐ予定の兄を支えるため、召使いのように尽くしていた少女、こがね。 兄や家族にこき使われ、言いなりになって働く毎日だった。 しかし、青年の姿をした日本刀の付喪神「美雲丸」との出会いで全てが変わり始める。 女の子の姿をした招き猫の付喪神。 京都弁で喋る深鍋の付喪神。 神秘的な女性の姿をした提灯の付喪神。 彼らと、失くし物と持ち主を合わせるための店「失くし物屋」を通して、こがねは大切なものを見つける。 ●不安や恐怖で思っている事をハッキリ言えない女の子が成長していく物語です。 ●自分の持ち物にも付喪神が宿っているのかも…と想像しながら楽しんでください。 2024.03.12 完結しました。

後宮浄魔伝~視える皇帝と浄魔の妃~

二位関りをん
キャラ文芸
桃玉は10歳の時に両親を失い、おじ夫妻の元で育った。桃玉にはあやかしを癒やし、浄化する能力があったが、あやかしが視えないので能力に気がついていなかった。 しかし桃玉が20歳になった時、村で人間があやかしに殺される事件が起き、桃玉は事件を治める為の生贄に選ばれてしまった。そんな生贄に捧げられる桃玉を救ったのは若き皇帝・龍環。 桃玉にはあやかしを祓う力があり、更に龍環は自身にはあやかしが視える能力があると伝える。 「俺と組んで後宮に蔓延る悪しきあやかしを浄化してほしいんだ」 こうして2人はある契約を結び、九嬪の1つである昭容の位で後宮入りした桃玉は龍環と共にあやかし祓いに取り組む日が始まったのだった。

100000累計pt突破!アルファポリスの収益 確定スコア 見込みスコアについて

ちゃぼ茶
エッセイ・ノンフィクション
皆様が気になる(ちゃぼ茶も)収益や確定スコア、見込みスコアについてわかる範囲、推測や経験談も含めて記してみました。参考になれればと思います。

卑屈令嬢と甘い蜜月

永久保セツナ
キャラ文芸
【全31話(幕間3話あり)・完結まで毎日20:10更新】 葦原コノハ(旧姓:高天原コノハ)は、二言目には「ごめんなさい」が口癖の卑屈令嬢。 妹の悪意で顔に火傷を負い、家族からも「醜い」と冷遇されて生きてきた。 18歳になった誕生日、父親から結婚を強制される。 いわゆる政略結婚であり、しかもその相手は呪われた目――『魔眼』を持っている縁切りの神様だという。 会ってみるとその男、葦原ミコトは白髪で狐面をつけており、異様な雰囲気を持った人物だった。 実家から厄介払いされ、葦原家に嫁入りしたコノハ。 しかしその日から、夫にめちゃくちゃ自己肯定感を上げられる蜜月が始まるのであった――! 「私みたいな女と結婚する羽目になってごめんなさい……」 「私にとって貴女は何者にも代えがたい宝物です。結婚できて幸せです」 「はわ……」 卑屈令嬢が夫との幸せを掴むまでの和風シンデレラストーリー。 表紙絵:かわせかわを 様(@kawawowow)

黒の少女と弟子の俺

まるまじろ
ファンタジー
かつて各地で起こったカラーモンスターの大量発生で滅びかけた世界、エオス。 様々な生命がカラーモンスターによって蹂躙され、人類も滅ぶ寸前まで追い詰められた。 しかし、各地で生き残った人類は必死で戦う力を身に付けてカラーモンスターに対抗し、少しずつ奪われた生活圏を取り戻していった。 こうして文明の再興に差はあれど、エオスの人類は徐々にその数を増やしていった。 しかし人類を含めた多くの生命最大の敵であるカラーモンスターは滅びたわけではなく、未だ世界中でその脅威を聞かない日は無い。 これはそんな危険に満ちた世界を渡り歩く、少年少女の物語。 ※カクヨム限定で第二部を公開しています。是非ご覧下さいませ。

神様に愛されてる巫女のわたしはずっと悪神に恋してる。 ー 隠れ子と鬼と神隠しの巫女 ー

雨野 美哉(あめの みかな)
キャラ文芸
M県Y市にある西日野神社の巫女、西日野珠莉は、烏鷺慈雨由良波斯射大神という神の寵愛を受けていた。 そんな彼女の前に、初恋の相手であるウロジューユ・ラハ・スィーイという少年が現れ、巫女と神、そして悪神の、手に汗握り血で血を洗う三角関係が始まる。

処理中です...