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片隅で小説を読んでいた、レナちゃんは、このクラス、いやこの学校で一番美人かもしれないってほど、綺麗という第一印象だった。
うるさい天使だ。そんな大声じゃなくても聞こえるし、もしこの教室に、この天使が他にも見えている奴がいたら、多分すぐ『うるさい』って言われそうだけど、大丈夫か?まぁ誰もこっちを見てもいないし、他の守護霊たちにはご迷惑ではないようだ。クラスメイトはみんなスマホをいじったり、女子はすでにグループになってお喋りしたりしている。でも、教室の守られてばかりの弱い女じゃないし、巫女なの。家がお寺でね。だからうっかりブンくんから、あなたを御祓いしちゃうかもしれないけど、パキネちゃん、どうぞよろしくね」
 笑顔も品を感じる。浴衣とか着物とか袴とか、和服が似合いそうな凛とした態度と、姿勢の良さ、一つ一つの所作がとても丁寧で綺麗だった。
 高校生活初日。レナちゃんに出会ったのは、偶然なんだろうか。何か問題が起こると今までみんなパキネのせいにしてきたし、実際パキネの悪戯みたいなものだったけど、パキネはレナちゃんの『うっかりお払い』という言葉にビビったのか、俺の背中に隠れた。両肩に乗せられた手には凄く力が入っている。さらに、肩甲骨には柔らかい弾力を感じた。やっぱりなんかデカくなった気がする。いつからこんなに女性らしい体つきになったんだろう。四六時中一緒にいると些細な成長にはなかなか気がつけないもんだ。
「あたしレベルの疫病神をうっかり御祓いなんて出来るわけないでしょ?」
「あら、じゃあ出来るかやってみます?私、悪霊を御祓いした経験は何度もあるのよ?」
「悪霊ごときと一緒にしないで!絶対負けない!」
 俺の耳の横で、滅茶苦茶大きな声でパキネがそう言った。俺は耳がキーンとなった。
 だから、勝ちとか負けって関係あるのか?

☆☆☆

 中学生の時は内申点欲しさに部活をやっていた。サッカー部に入ったけど、初日にねん挫。雨の日の試合で滑って転ばない日はなかった。絶対にこけた。全員が注文したはずなのに、俺だけユニホームとスパイクが注文できてなくて、体操着と運動靴でずっと新入生感が抜けなかったり、いざ届いたら今度はスパイクのサイズが全然違ったものが届いて、返品する羽目になったり、全部パキネのせいだった。
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