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 襟足くらいに揃ったセミロングの彼女の赤黒い髪は、朝日を浴びて艶やかに輝いていた。触りたいな。目に入るたびにそう思う。俺だけはパキネに触れることも出来るけど、ほとんど触れたことはない。パキネは俺を滅茶苦茶触って来るけど、甘えてくる感じが可愛くて邪険には出来ない。でも、あんまり触られると恥ずかしくて、俺から避けてしまうことが多い。
 俺みたいに普通、あるいはそれ以下の外見の男が、いくら自分の守護霊でも、可愛いからって安易に触れていいものだとは思えない。疫病神と言ったって神なのだ。
いつだって隣を歩いてくれているけど、自分とじゃ外見も身分も釣り合ってないって俺が一番わかってる。
 一緒にいるところを誰かに見えているわけじゃないけど、自意識がいつだって邪魔をする。
 駅について、改札に新しく作った定期をタッチすると、バン!とゲートが閉まり、後ろに並んでいた人から舌打ちされた。
 だけど、何度タッチしてもゲートは開かないし、改札がピーピー鳴って煩かった。
 仕方がなく、駅員のところに行って事情を説明すると、ICカードが磁気不良を起こしていて使えなかったとのことだった。
「パキネ、やりやがったな」
「だってあたしにとっても今日は担当の人間の高校デビューだもん。今日は特別悪さしたい気分なんよ!」
 嬉しそうにニッコリしやがって。地獄に帰れコノヤロウって言いたいけど、可愛くて無理。
 俺の守護霊は疫病神だけど無駄にビジュアルが可愛すぎて困る。
「狙うはギリ遅刻!」
「ふざけんな。狙うな。ギリでいいから初日は遅刻したくない」
「もぉ。つまんなぁい」
 ささやかな不幸が俺にはつきまとう。死ぬまでずっと、疫病神は俺の隣を歩くらしい。
 俺は一生恋も出来ないで独身かもしれない。そう思っていたけど、なんとか遅刻しないで教室に入り、自分の席に座った。
窓際の一番前の席だった、角席、つまり先生が当てやすい席。多分、自己紹介とかも全部。俺から始まる。最悪の席だ。
でも、隣に座っていた女子が可愛いのが救いかもしれない。パキネは疫病神なのに見るからに明るい性格の雰囲気だけど、隣の女子はスマホじゃなくて小説を読んでいる。背筋も真っすぐで、綺麗な子だと思った。長い首に小さな黒子があって、色っぽいとも思った。
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