おれの守護霊疫病神。隣の席は巫女だし邪神と戦う準備できた

４

そして、今日は、高校生活初日。入学式だ。当然のように今日も赤信号から通学路は始まった。信号で立ち止まると、横にはピッタリと灰色のワンピースを着た同じ十五歳くらいのパキネが立ってる。
「ブン、相変わらず早起きやね。あたしまだ眠い」
「全部、パキネのせいだろ。普通の時間に家出ても絶対遅刻させようとしてくるじゃん」
　俺たちは頭の中で思ったことを会話にすることが出来るから、周りの人には俺が変な奴だとは一切思われる心配はない。俺が話しかけたことしかパキネには聞こえないらしいから、脳内のプライバシーは一応守れていることが救いだった。
「しかたないじゃん。あたし疫病神だもん」
　子供の頃は座敷童だと思って家族で歓迎していたけど、今はコイツが疫病神だってことがわかる。
　信号が青に変わって歩き出そうとしたら、靴紐の紐を踏んでしまい、急いで結びなおして立ち上がった。でも、信号はまた赤に変わってしまった。
「パキネ。俺、今日高校デビューなんだが」
「だねぇ。あたしも成長したけど、ブンも大きくなったね」
「お前、わざとやってるだろ」
「何が？」
「信号は赤だし、紐靴の紐緩めただろ」
「えー。何でもかんでもあたしのせいにするのよくないよ？」
すぐにでも寺か神社に駆け込んで、御祓いしてやりたくなるけど、そうしないのには理由がある。
「靴紐踏んで転ばせなかっただけありがたいと思ってよ」
「やっぱお前がやったんじゃんか！」
　俺の守護霊こと疫病神のパキネは、滅茶苦茶ビジュアルがいい。可愛すぎる高校生コンテストがあったら間違いなくグランプリだろう。普通の人が百回整形しても敵わないくらい可愛いと思う。
おかげで、恋ってものを俺は知らない。パキネより可愛い女子を知らないし、パキネほど俺を理解して寄り添ってくれる女性は、今のところこの世にいないのだ。
「電車遅延させようかなぁ」
「ふざけんな。なんの権限があって電車遅延させるんだよ」
「疫病神やもん。人を不幸にするのが仕事だもん」
「俺の守護霊が他人様に迷惑かけるかと思うと胃が痛いからやめろ」
「ウケる」
　コイツ……、可愛くなかったらマジで御祓いしてもらって消してる。
「ブン早く行こ」
「お前が言うな」