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俺の守護霊疫病神なんだけど無駄にビジュアルが可愛くて困る。

 子供は真剣に遊んでる。だから変なジンクスもある。
公園の砂場で山を作っていた。水を含ませた砂で山を作り、ある程度大きくなったら、乾いた砂をふりかけて、また水を少し含ませた砂で山を一回り大きくして、全体に乾いた砂をかける。なんでだかこれが正しいお砂場遊びの山の作り方だと思っていた。
 まだ四歳だった。四歳の誕生日会を開いてもらった次の日のことだから、よく覚えている。
「あたしも一緒に作ってもいい?」
 灰色の着物みたいなワンピースを着ているおかっぱ頭で、オデコを白いピンでとめている女の子だった。俺と同じくらいの女の子が突然現れてそう言った。
 可愛い子だなってすぐに思った。
「じゃあトンネル開通させようよ」
「ええよ」
 俺は『ええよ』と笑った彼女のことをまた可愛いって思った。
でも、トンネルを掘る俺を彼女は見ているだけだった。
「そっちからも掘ってよ」
「できんよ」
 変なじゃべり方。東京生まれの東京育の俺は方言ってものをまだ知らなくて『ええよ』は本当はそんなことしなくて『ええよ』って意味だったかな?と思った。でも『できんよ』は『できないよ』って意味だってなんとなく分かった。
「文太」
「なに?」
 名前も教えてないし、名前も知らない女子は俺のことをニコニコしながら見つめていた。
「トンネル出来たら山の中で握手しよう」
 そう言われて俺は、じゃあそっちからも掘ってよ。って言おうとしたら五時を知らせる鐘の音がした。
「帰らなきゃ」
 俺はどうせ明日、幼稚園が終わってからこの砂場に来ても、この山は誰かに壊されているだろうなと思ったので、だったら自分で壊そうと立ち上がって、片足をあげた。
「壊しちゃうの?」
「うん。だって俺が作ったのに誰かが壊すのは変だし嫌だもん」
「ふぅぅうう」
 昨日俺が誕生日ケーキのろうそくにしたみたいな息を彼女は山に吹きかけると、山なんて作ってなかったみたいに平らな砂場に戻った。手品みたいで俺はビックリして、彼女に一気に興味を持った。
「すげぇ!」
 俺は両手サイズの山をすぐに作って「ふぅうう!」と息を強く吐いたけど、山はびくともしなかった。
「どうやったの?」
「えへへ、内緒」
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