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裏山の古墳
暗躍する影
しおりを挟む二人が去って巨大な八岐大蛇の死体が転がっている古墳の中で何者かが動く姿が現れます。それは、あの羽田銀太郎でした。
最近調子に乗っている火星クラブにいつもイライラしている銀太郎は、何らかの鉄槌を下したくなる気持ちなのでしたが、目の前の肉塊に手を振り奇妙な呪文を唱えました。
「アルケメク メクキメク メクムラクマ」
というと、あの八岐大蛇の胴から離れた首が集まってきて、元のところにくっついたのです。
「よし、これで、転生の儀式は済んだ。いくぞ!」
さらに彼が複雑な手の動きをすると、八岐大蛇は、人間の形に縮んでゆくのでした。一人の少年の姿になります。
「はうっ。僕は何をしているんだ。というか、この身体はなんだ」
「八岐大蛇君。ようこそ。現代の世界へ」
「はっ?」
「私は、羽田銀太郎。君を人間に転生させたものだよ」
「転生って、そんな簡単にできるものなの?」
「ま、まあ、結構大変なんだけどな。そこら辺は、また別の時に話そう。とにかく、君は一旦、命を救われたんだ、だから、私のもとでしばらく働いてくれないか」
「あ、いや。もう、それは。それは。生きているんなら何でも良いんですよ。『とにかく何でも生き残れ』というのが、死んだ親父の遺言ですから」
「あっ、あの、スサノオに倒された偉大なる初代八岐大蛇だな」
「そうでさあ。でも、僕も結構、強かったんだけどなあ。あいつ、ライトセイバー使ってくるからさ」
「今の俺たちでは、奴らには勝てないかもしれない」
「そうなんですか。僕……と言いますか、あっしとしましては、そんなにもう興味ないですけどね」
「えっ?お前を殺したんだぞ」
「でも、生きてますし。あっしは、そういうところはサバサバしているんでさ」
「そういうことでは、悪役失格だぞ。いいか、数日中に、我らがボスが転校してくるんだ。その時に、奴らを倒すことができる……」
「そうなんですか。じゃあ、あっしはどうしようかな。あっしも、転校しなきゃいけないですよね。そうなると」
「まあ、そうだな。安心しろ。住民票とかは偽造してやるから」
「へえ。よくわかんないですが、よろしくです」
というと、八岐大蛇は握手をしたのだった。
「あっしは、これからは、八幡越智郎やはたおちろうと名乗りますので」
「わかった」
羽田銀太郎たちは、外に出て月を見上げる。
「いいか、俺たちは、あの月に誓ってきっといつか、奴らを血祭りにあげるんだ」
「はい。わかりました」
「その時、地球は……アッヒャッヒャッ!アッヒャッヒャッ!」
と羽田銀太郎が笑うので越智郎も合わせて笑いました。
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