もうダメだ。俺の人生詰んでいる。

会田鉄夫と会食

もうダメだ。この小説が詰んでいる。

「昔、ファミコンの将棋のゲームオーバー画面で『ツミデス。アナタノマケデス』っていうのがあったなあ」
「ほう。それはそれは」
「もう、私のこの小説も詰みかもしれない」
「あるいは、犯罪の罪かもね」
「いや、それはそうですね。小説を書くってことは詰みですよ。プロメテウスですよ」
「え？プロテイン？」
「違う。人類に火を教えたことにより、大神ゼウスに捕えられて苦しめられている神のことさ」
「あるいは、アダムとイブの蛇みたいなものか」
「あれもそうだった。知恵のリンゴを食べさせたら、裸でいるアダムとイブが恥ずかしくなったんだよね」
「うん。それにしても、蛇は善意でリンゴを渡したのか？それとも悪意だったのか」
「そこは意見が分かれそう。俺は悪意の立場だけど」
「いや、俺は善意だなあ。そもそもさ。そこら辺にリンゴが実っていたら、蛇が言わなくても食べていたような気もするんだよ」
「それを言っちゃうと、神話が成り立たないじゃない」
「そうか。まあ、そういう意味で言ったら俺の中ではプロメテウスと蛇は一緒になるなあ」
「いや、プロメテウスにも悪意があったのかもしれない。知性にはきっとどこかに悪意があるんだよ。それは自分はそうは思っていなくても悪が具現化されてしまうのが知性なんだよ」
「核兵器とか考えるとそうだね。じゃあ、考えること自体がどこかに悪を内包しているのか。それはそうかもしれない」
「で、この小説もそろそろ悪に目覚めなきゃいけなあってことだろうね」
「この世の中は悪だらけだからね。一回、2022年から3000年まで何が起こったか勉強してみれば」
「あっ、それグッドアイデア」

  と私は指を鳴らしてウインクした。