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私小説 4

家なき子と法華経のおしえ (後編)

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「長子窮子のたとえというのは、こういう話です。これは、Wikiからの引用です。

 ある長者の子供が幼い時に家出した。彼は50年の間、他国を流浪して困窮したあげく、父の邸宅とは知らず門前にたどりついた。
 父親は偶然見たその窮子が息子だと確信し、召使いに連れてくるよう命じたが、何も知らない息子は捕まえられるのが嫌で逃げてしまう。長者は一計を案じ、召使いにみすぼらしい格好をさせて「いい仕事があるから一緒にやらないか」と誘うよう命じ、ついに邸宅に連れ戻した。
 そしてその窮子を掃除夫として雇い、最初に一番汚い仕事を任せた。長者自身も立派な着物を脱いで身なりを低くして窮子と共に汗を流した。窮子である息子も熱心に仕事をこなした。
 やがて20年経ち臨終を前にした長者は、窮子に財産の管理を任せ、実の子であることを明かした。この物語の長者とは仏で、窮子とは衆生であり、仏の様々な化導によって、一切の衆生はみな仏の子であることを自覚し、成仏することができるということを表している。
 なお長者窮子については釈迦仏が語るのではなく、弟子の大迦葉が理解した内容を釈迦仏に伝える形をとっている。

 とまあ、このような内容なのです。『家なき子』のレミは、物語の真ん中で母親に会っていますが、母親の子だという自覚を持っていないという話でもあるんですね。でも、最終的には救われます。
 二つとも物語の構造は同じで、『この苦難に塗(まみ)れた主人公とは、読者のあなたなのだ』というメッセージが含まれております。
 これは、マロ氏の姉妹品「家なき娘」(日本ではアニメの「ペリーヌ物語」として有名)でも……、というよりも、ほとんどペリーヌの話は、女性版「長者窮子のたとえ」です。酷似というくらい似ています。
 そして、私もこう言いたいのです」

『あなたがたは皆、救われております。一人残らず、救われています。この話を読もうが読むまいが、私の講演を聞こうが聞くまいが、みんな、実は救われているのです。悲しみ、苦しみ、憎しみ、を持つのは自由ですが、それはあなたのものではないのです。あなたの中には、大きな光があって、既に、幸せは約束されています。あなた方がなすべきことは、救われている自分に感謝すること、救われていないと思い込んでいる人を救われていると自覚するのを助けること、これだけなんですね。この世の中には苦しむ人、死んでしまう人は多いです。あなたは恐怖するかもしれない。
 でも、死んでまえば意識はないし、病気になったらその病気に圧倒されるだけです。むしろ、死や病気、不幸への恐怖が、あなた方を不幸にするのです。
 良いですか?
 この世の中には、恐怖すべきことなんて、何もないのです。起きてしまったら、それは起きてしまったことです。我々には、何もできません。かと言って、それは、あなた方が抱く恐怖そのものとは全く違うものなのです。
 多くの人たちは、恐怖に恐怖して、他の人を殺めたり、策謀で落としめたり、ガリガリの金の亡者になったりします。しかし、その結果、何があるでしょうか?
 恐怖に恐怖して、さらに、罪を重ねるだけです。そういうことを繰り返す前に一旦、考えてください。ひょっとして、自分はもう救われているのではないか?自分の中に光があるのではないか?
 現実には、誰の心の中にも光はあるのです。あなたの心の中にも光はあります。だから、いつまで経っても宗教の灯(ともしび)はなくならないし、神様はいつも存在し続けるのです」

   ホールは万雷の拍手に包まれた。ミスターアイダは、とても素晴らしい説教をしてくれた。私は、会田の楽屋を訪ね、彼のことを褒め称え、彼と一緒にスナック「吉四六」へと行くことにしたのであった。
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