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私小説 3
「志村が死んだ」とマンデラ効果
しおりを挟むガストで、私と会田鉄夫は語らっていた。私は、いつもネットで色々な話題を見つけては会田鉄夫にぶつけてみる。その反応を見て、世の下々の反応を確かめる、ということをしているのであるが、今回はマンデラ効果のことだった。
「マンデラ効果って知っているかい?」
すると意外なことに、会田鉄夫は私の十倍マンデラ効果のことを知っていた。マンデラ大統領が死んでいないのに、死んだということで、多くの人たちが認めてしまった現象のことを言う。これは勘違いなのだけれども、どうしてそんな勘違いをするのかと言うと、過去から現在に行くにつれて、色んな選択肢が木の枝のように枝分かれして伸びているのであるが、あまりに複雑だと、宇宙が混乱するので、「とある選択肢が削除される」という現象があるのだ。
もし、死んでもいないのに、その人が「あれ死んだんじゃなかったっけ」と思われたときは、それは世界線が変更された可能性が高い。削除されたはずの世界線の話が人々の頭に色濃く残っているのである。これと引き合いに良く出されるのは、
「志村が死んだ」
という報道であった。かなり昔にまだ志村けんが存命の時に、東スポなどで大騒ぎになったのだ。そう考えてみると、東スポなども「マンデラ効果」を良く観察することができる。下手すると、東スポ自体が実は存在していなくて、マンデラ効果の産物なのかもしれない。
「つまりだね」と私は続ける。「私のこの小説もみんなそんなんだ。マンデラ効果なんだよ。てっきり、そうに違いない」「なるほど」「私は、とんでもない悪人かもしれないし、モビルスーツパイロットかもしれない。そーゆーもんさ」「そうか」「でも、それは一般社会では、戯言と切り捨てられるんだよ。それを聞いてくれるお前ってのは、素晴らしい人物だと思う」「えー」
会田鉄夫は、ヒョコヒョコ踊った。
「照れるな~」
というと、後ろから、変な祭囃子のような音曲がする。
「ツンチャツンチャツンチャンチャン。
ツーチャッカ
ツーチャッカー
ツーチャッカチャン!」
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