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機動兵士
光の声の導き
しおりを挟む「お兄ちゃん。お兄ちゃん。どこに行ったの」
サイキックガルダンは、両肩と両脇にあるミサイルポッドからミサイルを放ち続けている。それでいて、声は呼びかけてきているのだ。
岩から岩に移りつつ、私は頭がおかしくなりそうになる。あのグズと比べて1・5倍もある、大型戦闘ロボに対抗するには、ビームアンブレラを使うしかないのであるが、まずは相手を追い込まないといけない。
それと同時に、四条秋葉を殺しても良いのかという躊躇も出てくる。姉の夏生、父の大五郎が怒るだろう。結婚なんて夢のまた夢である。そういう意味でも私の人生は詰んでいるのだ。いや、そんなことはいつものことである。大切なのは、今この現状に最適化した行動を取ることである。
「お兄ちゃん。政府に従った方がいいよ。やめようよ。テロリストなんて」
「だったら、何で君は引きこもっていたんだよ」
と思わず私は心の奥底にあった疑問をインターカムで発してしまった。すると、しばらく爆撃が沈黙してしまう。
どうしたのかと、岩陰から覗くと、サイキックガルダンが空中でクルクル回っていた。紫色の光線が飛び交い、赤い稲妻のようなものがいくつも辺りに走っている。
「あああ……あああ……お兄ちゃん。助けて。お兄ちゃん。怖いよー」
私はそれを見て何故だか知らないが、涙が出てしまった。前にあった時は、何も感じなかったが、今ならはっきりわかるのだ。
いや、正確にはわかるような気がするのである。彼女の寂しさ、苦しさが……。
「そんなのに乗っているからだよ!秋葉、出てくるんだよ。鉄の牢獄から」
「お兄ちゃん?いるの?」
「ああ、いるよ」
「あたし、出た方がいいの」
「そうだよ。君は、実験体として、モルモットとして利用されているだけなんだ」
「悪いのはあたしなの……」
「誰も……誰も悪くなんかないんだよっ!」
というと、私は岩陰からグズを出し、サイキックガルダンの前に立ったのであった。勿論、攻撃を喰らえば撃墜されてしまう。これは一種の賭けであった。
「お互いに正直に話そう。心の中を」
「うん。わかった」
というと、彼女の顔つきが変わる。厳しく冷徹で邪悪な表情になる。声のトーンも低くなる。
「先に、あの世で待っててね」
というと、サイキックガルダンの全砲門からビームやらミサイルやらが一斉発射された。
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