もうダメだ。俺の人生詰んでいる。

静馬⭐︎GTR

文字の大きさ
上 下
35 / 106
機動兵士

光の声の導き

しおりを挟む

「お兄ちゃん。お兄ちゃん。どこに行ったの」
   サイキックガルダンは、両肩と両脇にあるミサイルポッドからミサイルを放ち続けている。それでいて、声は呼びかけてきているのだ。
 岩から岩に移りつつ、私は頭がおかしくなりそうになる。あのグズと比べて1・5倍もある、大型戦闘ロボに対抗するには、ビームアンブレラを使うしかないのであるが、まずは相手を追い込まないといけない。
 それと同時に、四条秋葉を殺しても良いのかという躊躇も出てくる。姉の夏生、父の大五郎が怒るだろう。結婚なんて夢のまた夢である。そういう意味でも私の人生は詰んでいるのだ。いや、そんなことはいつものことである。大切なのは、今この現状に最適化した行動を取ることである。
「お兄ちゃん。政府に従った方がいいよ。やめようよ。テロリストなんて」
「だったら、何で君は引きこもっていたんだよ」
  と思わず私は心の奥底にあった疑問をインターカムで発してしまった。すると、しばらく爆撃が沈黙してしまう。
 どうしたのかと、岩陰から覗くと、サイキックガルダンが空中でクルクル回っていた。紫色の光線が飛び交い、赤い稲妻のようなものがいくつも辺りに走っている。
「あああ……あああ……お兄ちゃん。助けて。お兄ちゃん。怖いよー」
  私はそれを見て何故だか知らないが、涙が出てしまった。前にあった時は、何も感じなかったが、今ならはっきりわかるのだ。
 いや、正確にはわかるような気がするのである。彼女の寂しさ、苦しさが……。
「そんなのに乗っているからだよ!秋葉、出てくるんだよ。鉄の牢獄から」
「お兄ちゃん?いるの?」
「ああ、いるよ」
「あたし、出た方がいいの」
「そうだよ。君は、実験体として、モルモットとして利用されているだけなんだ」
「悪いのはあたしなの……」
「誰も……誰も悪くなんかないんだよっ!」
   というと、私は岩陰からグズを出し、サイキックガルダンの前に立ったのであった。勿論、攻撃を喰らえば撃墜されてしまう。これは一種の賭けであった。
「お互いに正直に話そう。心の中を」
「うん。わかった」
   というと、彼女の顔つきが変わる。厳しく冷徹で邪悪な表情になる。声のトーンも低くなる。
「先に、あの世で待っててね」
   というと、サイキックガルダンの全砲門からビームやらミサイルやらが一斉発射された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

だんだんおかしくなった姉の話

暗黒神ゼブラ
ホラー
弟が死んだことでおかしくなった姉の話

【なろう430万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

身体交換

廣瀬純一
SF
男と女の身体を交換する話

奇妙な日常

廣瀬純一
大衆娯楽
新婚夫婦の体が入れ替わる話

処理中です...