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機動兵士

サイキックガルダン

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 目の前に現れて、空中に浮きながら立っている機体は、巨大な鋼鉄の棺桶のようにも思われた。凶々しい機体が真横からゆっくりとこちらに方向転換する。全身に紫色の電磁シールドが張り巡らされている。このシールドへの対策は何回も聞かされているが、私にとって不可思議だったのはさっき聞こえた声であった。
 まさか、四条秋葉が乗っているはずはないが、あれは明らかに彼女の声である。しかし、つい、この前まで引きこもっていた女性がこんな戦闘ロボの操縦などというアグレッシブなことをするであろうか。
「ありえない」
  と呟いて神経を集中させようとした時にまた、
「お兄ちゃん」
  という声がした。そして、コックピット内の全方向スクリーンにくっきりと秋葉の顔が映ったのであった。それは、青白く儚げな表情であったが、反対に瞳は強い意志を持っているように見えた。
「秋葉?ど、どうして」
「わからない。お父さんが、テロリストは退治しなきゃいけないって、言ったから……」
   というと、サイキックガルダンは、肩に搭載されたパルサー砲を発砲させる。紫色の光弾が私の乗っているグズの足元を焼き払う。
「君はわかっているのか?戦争というものがどういうことを意味するかを」
「わからない。でも、戦わなきゃいけないの。国を救うため」
  グズは、左右に飛んで、連射されるパルサー砲をかろうじてかわす。
「国は君を利用しているんだぞっ!」
  私は無駄だと思ってもどうしても声をかけなくてはいけないと思った。
「お兄ちゃんは良い人なのに、どうしてこんなこと……しているのさ」
  小ジャンプで飛び退く後ろの方では、木々が光弾によって薙ぎ倒されてゆく。
「わからない。わからない。わからない」
   サイキックガルダンはパニックに陥ったようである。私は岩の後ろに隠れて、彼女を助けなくてはいけないと決意した。
「一、ニ、三」
  すぐさまジャンプすると、光の帯の中を進んでゆく。一歩間違えれば即死である。
「あはははは……。あははははは。死んじゃえ!死んじゃえ!死んじゃえ!お兄ちゃん!」
  グズは、何とかかわしてビームマゲワッパをガルダンの巨大な脚に放つ。しかし、
「パリン」
  と音がして真っ二つに割れて消滅した。
「効くわけないだろ!!間抜けがっ」
  と叫ぶと、巨大な腕を伸ばす。グズの片腕を掴んだのだった。
「お兄ちゃん!今からでも遅くない。降伏しましょう」
「降伏して何になるというんだ。君みたいに政府の奴隷になりたくない」
  すると、サイキックガルダンの全身が怪しく光った。
「あたしは奴隷じゃないんだよ」
  彼女の感情がガルダンを通して何倍にも増幅されて、光の束となって放出されるのである。
「危ない」
  私はすぐさま、グズの腕をマゲワッパで切断すると、岩陰に隠れたのだった。目も開けられぬような強烈な光が辺りを覆い尽くす。
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