もうダメだ。俺の人生詰んでいる。

静馬⭐︎GTR

文字の大きさ
上 下
34 / 106
機動兵士

サイキックガルダン

しおりを挟む
 声がした方を振り返ると、そこには茶色の髪を刈り上げ、無精ぶしょうひげを生やして眼鏡をかけている武骨ぶこつそうな男が立っていた。千景は男の姿を目で捉えた瞬間に、身構えた。透明状態を維持しているのに、男にはこちらの姿が見えている。

「そんな怖い顔をしなくてもいいぞ少年、少なくとも今は味方だ」

――今は? 引っかかる物言いをする

「そんな目で睨むなよ、あいつにきつい一撃を食らわせたのをお前も見ていただろ、少年?」男が手に持っている巨大な黒い十字架に、円形の突起物がついたもので、賢石けんせきを指しながら言った。千景は男への警戒けいかいを解くことなく「ああ、見ていた。ただ俺は少年なんて言われる年じゃない」と返した。

「そうかい、大分若く見えるな、まあ考えてみればそりゃそうか、あれだけ強いんだから、年もそれ相応にいってるか」

「お前は何者だ?」

「いきなり本題かい、初対面同士もっと会話を楽しもうぜ」

「俺は正体を知らないやつと会話をしない、せめて名前を名乗ったらどうだ?」

「そうかあ……まあ隠したところで、お前にはいつかバレるだろうし先に言っておくか、俺の名前はザックフォードだ、よろしくな」ザックフォードはそういうと同時に、白い手袋をした手で握手を求めてきた。千景は、その手を握るのを躊躇ちゅうちょした。

「用心深いのもいいことだが、俺はなにもしねえよ」と言ってザックフォードは千景の手をひったくるように握って、無理やり握手をした。

「な? なにもないだろってことでよろしくな、えっと……じゃあ次はお前の名前がなんなのか教える番だな」

 名前を教える番とか……ザックフォードに会話のペースを握られているように感じたが千景は、素直に自分の名前を名乗った。こんなところにいるんだこちらのことも少なからず知っているだろう。

「千景か、そうか……千景か……」ザックフォードは、口の中で名前の感触を確かめているようであった。そして「千景はノブナガという名前のやつを知らないか?」ザックフォードは唐突に思いもかけない名前を口にした。

「知っている」

「そうか、それは千景の味方だったのか? それとも敵だったのか?」

――歴史上の信長の事をいっているのなら敵も味方もない、俺は知らない。ゲーム内のノブナガなら明らかな敵。ただそれ以外にもノブナガなんていう名前はわりと多い気がする、漫画やドラマにも大量にでてくるし……

「ザックフォードが言うノブナガがどういうものかわからないから答えられないな」千景は思っていることを口に出した。

「そうか……なんていったらいいのかヴィネリアみたいに巨大な力を持ったやつとでもいったらいいのかそういう化物みたいなやつだと思うんだが」

「ああそれなら、敵だ、間違いなく」

「そ、そうか、なるほどな……」
「ノブナガがどうしたんだ? 何か関係があるのか?」

「いや……」ザックフォードは口ごもり、次に話すことを選んでいるようであった。そして「ちょっとな、こちらの事情ってやつだ」と歯切れが悪く続けた。

 そんなザックフォードの態度を見ると千景もあまり自分達のことを話す気にはなれなかった。ヴィネリアと共闘したことは確かだが、それだけで信頼するにはあまりにも、材料が少なすぎる。千景がザックフォードに対して知っている事実は、ヴィネリアに重い一撃を与えることが出来た。ただそれだけだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

おっさんの神器はハズレではない

兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。

毒素擬人化小説『ウミヘビのスープ』 〜十の賢者と百の猛毒が、寄生菌バイオハザード鎮圧を目指すSFファンタジー〜 

天海二色
SF
 西暦2320年、世界は寄生菌『珊瑚』がもたらす不治の病、『珊瑚症』に蝕まれていた。  珊瑚症に罹患した者はステージの進行と共に異形となり凶暴化し、生物災害【バイオハザード】を各地で引き起こす。  その珊瑚症の感染者が引き起こす生物災害を鎮める切り札は、毒素を宿す有毒人種《ウミヘビ》。  彼らは一人につき一つの毒素を持つ。  医師モーズは、その《ウミヘビ》を管理する研究所に奇縁によって入所する事となった。  彼はそこで《ウミヘビ》の手を借り、生物災害鎮圧及び珊瑚症の治療薬を探究することになる。  これはモーズが、治療薬『テリアカ』を作るまでの物語である。  ……そして個性豊か過ぎるウミヘビと、同僚となる癖の強いクスシに振り回される物語でもある。 ※《ウミヘビ》は毒劇や危険物、元素を擬人化した男子になります ※研究所に所属している職員《クスシヘビ》は全員モデルとなる化学者がいます ※この小説は国家資格である『毒物劇物取扱責任者』を覚える為に考えた話なので、日本の法律や規約を世界観に採用していたりします。 参考文献 松井奈美子 一発合格! 毒物劇物取扱者試験テキスト&問題集 船山信次  史上最強カラー図解 毒の科学 毒と人間のかかわり 齋藤勝裕  毒の科学 身近にある毒から人間がつくりだした化学物質まで 鈴木勉   毒と薬 (大人のための図鑑) 特別展「毒」 公式図録 くられ、姫川たけお 毒物ずかん: キュートであぶない毒キャラの世界へ ジェームス・M・ラッセル著 森 寛敏監修 118元素全百科 その他広辞苑、Wikipediaなど

平凡冒険者のスローライフ

上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。 平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。 果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか…… ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
よくよく考えると ん? となるようなお話を書いてゆくつもりです 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

ラストフライト スペースシャトル エンデバー号のラスト・ミッショ

のせ しげる
SF
2017年9月、11年ぶりに大規模は太陽フレアが発生した。幸い地球には大きな被害はなかったが、バーストは7日間に及び、第24期太陽活動期中、最大級とされた。 同じころ、NASAの、若い宇宙物理学者ロジャーは、自身が開発したシミレーションプログラムの完成を急いでいた。2018年、新型のスパコン「エイトケン」が導入されテストプログラムが実行された。その結果は、2021年の夏に、黒点が合体成長し超巨大黒点となり、人類史上最大級の「フレア・バースト」が発生するとの結果を出した。このバーストは、地球に正対し発生し、地球の生物を滅ぼし地球の大気と水を宇宙空間へ持ち去ってしまう。地球の存続に係る重大な問題だった。 アメリカ政府は、人工衛星の打ち上げコストを削減する為、老朽化した衛星の回収にスペースシャトルを利用するとして、2018年の年の暮れに、アメリカ各地で展示していた「スペースシャトル」4機を搬出した。ロシアは、旧ソ連時代に開発し中断していた、ソ連版シャトル「ブラン」を再整備し、ISSへの大型資材の運搬に使用すると発表した。中国は、自国の宇宙ステイションの建設の為シャトル「天空」を打ち上げると発表した。 2020年の春から夏にかけ、シャトル七機が次々と打ち上げられた。実は、無人シャトル六機には核弾頭が搭載され、太陽黒点にシャトルごと打ち込み、黒点の成長を阻止しようとするミッションだった。そして、このミッションを成功させる為には、誰かが太陽まで行かなければならなかった。選ばれたのは、身寄りの無い、60歳代の元アメリカ空軍パイロット。もう一人が20歳代の日本人自衛官だった。この、二人が搭乗した「エンデバー号」が2020年7月4日に打ち上げられたのだ。  本作は、太陽活動を題材とし創作しております。しかしながら、このコ○ナ禍で「コ○ナ」はNGワードとされており、入力できませんので文中では「プラズマ」と表現しておりますので御容赦ください。  この物語はフィクションです。実際に起きた事象や、現代の技術、現存する設備を参考に創作した物語です。登場する人物・企業・団体・名称等は、実在のものとは関係ありません。

処理中です...