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私小説
説得のプロ
しおりを挟むそれから数日後、またいつもの蕎麦屋で彼女に会うと
「けど、どうしちゃったの?あなた、説得のプロなのっ」
と私が秋葉を動かしたことを、夏生は褒め称えているみたいであった。
「いや、何か、そういう特技があるんだよ。私は昔から、『こうして欲しい』というと願いが叶うタイプなんだ」
「へえ」
「だから、あなたとも付き合いたい」
「そうなんだ」
「うん」
「でも、そうなってない」
「これは多分、理由があると思うんだ。つまり、私の中で、何か、あなたへのストッパーのようなものが働いているのかもしれない」
「ほう。私のせいではなくて」
「うん。多分、原因は私の中にあるんだ。何かがあるんだ。それは何なんだろう、というのがこの小説の眼目なんだよ」
「この小説」
彼女は怪訝そうな顔をする。いや、それは完全に私だけの問題である。
「あいや。何でもない。こっちの話だよ」
「そう」
と彼女は答える。それから少したわいのない世間話をしてから、私は彼女と別れた。日常というやつはこうやって、記述してゆくと延々と記述できるが、果たして、読者はこんなものを読んでいて楽しいのか、私は心配になってきた。
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