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私小説
あったかシチュー
しおりを挟む「ほうら。あったかシチューですよ」
というと、割烹着を着たおばさんが、急に小さなお椀にシチューを入れて持ってきた。どうやら、新しいメニューに加わるのでサービスしてくれるらしい。
「ありがとうございます」
といって、私がシチューを受け取ると、夏生は、物欲しそうに見ている。
「えっ、欲しいの」
「欲しいけど、太っちゃうからなあ。だから、やめとくよ」
「いいじゃん。少しくらい太ったって」
「ダメダメ。このタイミングで、シチューをあと少しでも入れると、体重がとんでもないことになるから」
「そんな、とんでもないことになったことってあった?」
「あなたは無頓着だから、わかんないんだって」
「そうなのか」
「そーよ」
「っていうか、俺って無頓着かな」
「そうよ」
「そうか。そうかもしれないね」
なんとなく話題が途切れたので、夏生は、話を小説の方に戻した。
「そういえば、小説を書いているのだとか」
「うん。書いているよ」
「どんな小説を書いているの?」
「うーん、恋愛小説かな」
「へえ。面白そう。完成したら教えて」
「うん。でもねえ。自分、そんなに恋愛について知らないからさ。そこから、バトル物に舵を切ろうと思っているんだよね」
「バトル?恋愛ものだったのに」
「うん。面白いだろ。恋愛もののポエムみたいな空気を引きずりつつ、いきなりバトルという」
「ジャッキー・チェンみたいなものかね」
「ジャッキーかどうかは知らないけど、あの人のポリスストーリーとか少し青春ものを連想させるけどね」
「うん。あんまり知らないけど」
.「知らないのかい」
「うん」
こうして、話の腰がいったんボキボキに折られた後で、彼女はつぶやいた。
「実は大変なことが起きているの」
「え?何」
私は、何か彼女に起きたのなら、すぐに助けてあげる気持ちでいたが、しかし、それは地獄の入り口へと繋がる、いわゆる一種の罠のようなものであった。しかし、この時、私は気づかずに、コクのある美味しいシチューに舌鼓を打っていた。
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