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私小説

四条夏生

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 それから、ようやく蕎麦屋に着いたのだった。蕎麦屋「うずまさ」であった。恐らく京都の太秦とは何の関係もないと思う。ここは、まるで体育館のような広い蕎麦屋なのである。いや、避難所に近いであろうか。災害が起きたらそのままそこに行けそうな感じなのである。

 そこの隅っこの方に、四条夏生が席についていた。私は、彼女に笑顔で挨拶をすると、彼女も微笑んだ。もう、三十を過ぎた女性であるが、なかなかウブな感じもした。髪の毛は、ストレートで細身であった。黒縁メガネをして、緑の縞模様の地味なシャツを着ている。

「どうも」

   というと、私も着席する。店の中は、屋根が広くて、地元のお客が数人集まって話していた。明らかに、私たちの存在は浮いていたがしょうがない。私も夏生も何故か、いつもここで会うことになっていた。

「どう?最近、何か面白い小説は見つかった」

  と彼女は聞いてくるので、私は最近、週刊「文春」の書評欄で読んだ適当な本の内容をあたかも自分が読んだように話したのであった。というのも、私はもう最近、とんと本を読んでいない。

 いや、その前に何で、会った途端に、彼女が本のことを聞いてきたのかの話をしなくてはならない。二人は、大学の文芸サークルにいたのである。「文学同好会」というものであった。百年も続いているという歴史があったのだ。

 私も彼女もそのサークルは卒業して勿論行ってはいないが、そのサークルでできた人間関係はまだ続いている。何よりも私と彼女が文学のことを話すことが多かった。

 二人は、カウンターにゆき、蕎麦をお盆にもらってきたから、また席についてコップに水を汲んで、小説の話でもすることにした。私はこの小説を自分のブログに連載しているから、そのことも話さないといけないのだ。
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