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私小説
A子さん
しおりを挟むA子さんは近所のスナックのママであった。私はそのスナックに一回だか二回だか行ったことがある。彼女は韓国人で、いや、台湾人だったかもしれない。
やけに色気がある女性で、いつも「お父さん」と言っている老人と行動を共にしていたが、最近亡くなってしまったのであった。
私は、前にコンビニで勤めていた時に、彼女はよくタバコをカートン買いしたのである。そこで、なんとなく顔を覚えて、ちょっとスナックに興味があったので行ってみたのである。
そうしたら、そこの常連の68歳の女性に腿を撫でられながら、「私は歳をとっているけどね。エッチはできるよ」ということを言い出した。私は「エッチはできる、と言われましても」ということを答えたのであった。
そこはもう少しオブラートに包んで返すのが、テクニックなんだよなあ、なんて私は思ったが、それよりもスナックというのは、自分には向いていなかった。あれはいかにダラダラ過ごすかということが、大切なのであろうが、そういう人間でもなかった。酒もそんなに飲まなかった。
「お元気ですか」
「ええ、まあ、元気よ」
「そうですか」
「あなたもたまには店に来なさいよ」
「ええ、行きます」
本当は行く気は一切ないが、私はそう答えると笑顔で分かれて、散歩道を歩くのであった。
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