5 / 34
4.前半ヒーロー視点/後半ヒロイン視点
しおりを挟む『『逢いたい』』
「繋がった!」
彼女と繋がった瞬間に雷に打たれたような衝撃が走る。
長年問いかけ続けて、ついに彼女が応えてくれた。
あぁ心が高鳴るようだ。
今すぐにでも彼女に逢いたい。
逢って抱きしめこの腕に閉じ込めてしまいたい。
こうしてはいられない……急がねば。
俺は部屋の外に出て待機している二人の護衛に声を掛ける。
「クライヴ、俺は今から西に向かう。馬車を出してついてこい。ダレンは俺がいない間の留守を頼むとレナールに伝えてくれ」
「ハッ……い、今から西にですか?」
「そうだ、彼女と繋がった。彼女は西にいる」
「お、お待ち下さい。それでしたら馬車を用意致します。護衛も手配致しますので、少々お時間を……」
「悠長に待っていられるか! 俺は先に行く」
クライヴの言葉を遮り、足早に部屋に戻る。
ようやく彼女が応えてくれたのだ。今すぐにでも彼女の元に駆けつけたい。
「ですが、もう夜更けですよ!」
「今宵は満月だ。光があれば問題ない。先に行くぞ」
「お、お待ち下さい! 危険すぎます!」
引き留めるクライヴを振り切って、俺は部屋の窓から飛び立つ。
「待っていてくれ……今すぐ逢いに行く」
==================
私が出立の用意を終えた頃には、夜がすっかり更けて空には満月が光り輝いていた。
「クローディア、これからはコノアと護衛のマークとドミニクが共にしていく。何かあれば三人を頼りなさい」
「……はい、お父様。コノア、マーク、ドミニクありがとう。これから宜しくお願いね」
「「「はい、聖女様。必ずお守り致します」」」
三人とも私が幼少の頃から教会で働いてくれている。
コノアは私と同じ十八歳でマークとドミニクは私の兄のような存在だ。
教会のみんなは私にとって家族のようなもの。私を人として扱ってくれるのは教会の人達だけだ。
「クローディア、気をつけて。どうか幸せになってくれ」
「お父様……私、諦めません。聖女の祈りが無くても、水を浄化する方法がないか探してきます。どうか待っていて下さい。必ず見つけ出します」
「……お前は勇敢で優しい子だ。クローディア、ありがとう。だが無理はしないでくれ。私はお前の幸せを願っているよ」
「お父様……」
私はお父様を抱きしめ、教会のみんなにお別れを告げた。
必ず見つけ出す。どうかそれまで無事でいて。
馬車に乗り込むとゆっくりと動きだす。
私は惜別の思いで満月に照らされた教会を見つめた。
──── カタ、カタ、カタ、
教会を出て少し経った頃、疲れが出たのか規則的な馬車の揺れに眠気を誘われ、一緒に馬車に乗ったコノアが心配そうに覗き込んでくる。
「聖女様、今日はお疲れでしょう。どうか少しでもお休み下さい。夜は馬車の速度が出せませんので、王都を抜けるのは少々時間がかかります。落ち着いた頃に起こしますよ」
「ありがとう、コノア。じゃ少し休ませてもらうわね。三人とも無理しないでね」
マークは御者台で馬車を走らせ、ドミニクは単騎で馬車を先導してくれている。私は仮眠を取るため馬車の窓に頭を寄せ、目を閉じる。
感じる……彼と繋がってから彼の存在を感じる。
心なしか彼との距離が近づいているようにも思える。
会えるだろうか? いや、必ず会うわ。
そして必ず浄化の方法を探し出す。
私は彼の存在を感じながら深い眠りに落ちていった。
0
お気に入りに追加
170
あなたにおすすめの小説
【完結】番を監禁して早5年、愚かな獣王はようやく運命を知る
紺
恋愛
獣人国の王バレインは明日の婚儀に胸踊らせていた。相手は長年愛し合った美しい獣人の恋人、信頼する家臣たちに祝われながらある女の存在を思い出す。
父が他国より勝手に連れてきた自称"番(つがい)"である少女。
5年間、古びた離れに監禁していた彼女に最後の別れでも伝えようと出向くと、そこには誰よりも美しく成長した番が待ち構えていた。
基本ざまぁ対象目線。ほんのり恋愛。
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
忌むべき番
藍田ひびき
恋愛
「メルヴィ・ハハリ。お前との婚姻は無効とし、国外追放に処す。その忌まわしい姿を、二度と俺に見せるな」
メルヴィはザブァヒワ皇国の皇太子ヴァルラムの番だと告げられ、強引に彼の後宮へ入れられた。しかしヴァルラムは他の妃のもとへ通うばかり。さらに、真の番が見つかったからとメルヴィへ追放を言い渡す。
彼は知らなかった。それこそがメルヴィの望みだということを――。
※ 8/4 誤字修正しました。
※ なろうにも投稿しています。
番認定された王女は愛さない
青葉めいこ
恋愛
世界最強の帝国の統治者、竜帝は、よりによって爬虫類が生理的に駄目な弱小国の王女リーヴァを番認定し求婚してきた。
人間であるリーヴァには番という概念がなく相愛の婚約者シグルズもいる。何より、本性が爬虫類もどきの竜帝を絶対に愛せない。
けれど、リーヴァの本心を無視して竜帝との結婚を決められてしまう。
竜帝と結婚するくらいなら死を選ぼうとするリーヴァにシグルスはある提案をしてきた。
番を否定する意図はありません。
小説家になろうにも投稿しています。
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
逃した番は他国に嫁ぐ
基本二度寝
恋愛
「番が現れたら、婚約を解消してほしい」
婚約者との茶会。
和やかな会話が落ち着いた所で、改まって座を正した王太子ヴェロージオは婚約者の公爵令嬢グリシアにそう願った。
獣人の血が交じるこの国で、番というものの存在の大きさは誰しも理解している。
だから、グリシアも頷いた。
「はい。わかりました。お互いどちらかが番と出会えたら円満に婚約解消をしましょう!」
グリシアに答えに満足したはずなのだが、ヴェロージオの心に沸き上がる感情。
こちらの希望を受け入れられたはずのに…、何故か、もやっとした気持ちになった。
王命で泣く泣く番と決められ、婚姻後すぐに捨てられました。
ゆうぎり
恋愛
獣人の女の子は夢に見るのです。
自分を見つけ探し出してくれる番が現れるのを。
獣人王国の27歳の王太子が番探しを諦めました。
15歳の私は、まだ番に見つけてもらえる段階ではありませんでした。
しかし、王命で輿入れが決まりました。
泣く泣く運命の番を諦めたのです。
それなのに、それなのに……あんまりです。
※ゆるゆる設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる