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4.前半ヒーロー視点/後半ヒロイン視点

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   『『逢いたい』』 



「繋がった!」

 彼女と繋がった瞬間に雷に打たれたような衝撃が走る。

 長年問いかけ続けて、ついに彼女が応えてくれた。

 あぁ心が高鳴るようだ。
 今すぐにでも彼女に逢いたい。
 逢って抱きしめこの腕に閉じ込めてしまいたい。

 こうしてはいられない……急がねば。

 俺は部屋の外に出て待機している二人の護衛に声を掛ける。

「クライヴ、俺は今から西に向かう。馬車を出してついてこい。ダレンは俺がいない間の留守を頼むとレナールに伝えてくれ」

「ハッ……い、今から西にですか?」

「そうだ、彼女と繋がった。彼女は西にいる」

「お、お待ち下さい。それでしたら馬車を用意致します。護衛も手配致しますので、少々お時間を……」

「悠長に待っていられるか! 俺は先に行く」

 クライヴの言葉を遮り、足早に部屋に戻る。
 ようやく彼女が応えてくれたのだ。今すぐにでも彼女の元に駆けつけたい。

「ですが、もう夜更けですよ!」

「今宵は満月だ。光があれば問題ない。先に行くぞ」

「お、お待ち下さい! 危険すぎます!」

 引き留めるクライヴを振り切って、俺は部屋の窓から飛び立つ・・・・

「待っていてくれ……今すぐ逢いに行く」



==================



 私が出立の用意を終えた頃には、夜がすっかり更けて空には満月が光り輝いていた。

「クローディア、これからはコノアと護衛のマークとドミニクが共にしていく。何かあれば三人を頼りなさい」

「……はい、お父様。コノア、マーク、ドミニクありがとう。これから宜しくお願いね」

「「「はい、聖女様。必ずお守り致します」」」

 三人とも私が幼少の頃から教会で働いてくれている。
 コノアは私と同じ十八歳でマークとドミニクは私の兄のような存在だ。
 教会のみんなは私にとって家族のようなもの。私を人として扱ってくれるのは教会の人達だけだ。

「クローディア、気をつけて。どうか幸せになってくれ」

「お父様……私、諦めません。聖女の祈りが無くても、水を浄化する方法がないか探してきます。どうか待っていて下さい。必ず見つけ出します」

「……お前は勇敢で優しい子だ。クローディア、ありがとう。だが無理はしないでくれ。私はお前の幸せを願っているよ」

「お父様……」

 私はお父様を抱きしめ、教会のみんなにお別れを告げた。

 必ず見つけ出す。どうかそれまで無事でいて。

 馬車に乗り込むとゆっくりと動きだす。
 私は惜別の思いで満月に照らされた教会を見つめた。


──── カタ、カタ、カタ、


 教会を出て少し経った頃、疲れが出たのか規則的な馬車の揺れに眠気を誘われ、一緒に馬車に乗ったコノアが心配そうに覗き込んでくる。

「聖女様、今日はお疲れでしょう。どうか少しでもお休み下さい。夜は馬車の速度が出せませんので、王都を抜けるのは少々時間がかかります。落ち着いた頃に起こしますよ」

「ありがとう、コノア。じゃ少し休ませてもらうわね。三人とも無理しないでね」

 マークは御者台で馬車を走らせ、ドミニクは単騎で馬車を先導してくれている。私は仮眠を取るため馬車の窓に頭を寄せ、目を閉じる。

 感じる……彼と繋がってから彼の存在を感じる。
 心なしか彼との距離が近づいているようにも思える。
 会えるだろうか? いや、必ず会うわ。
 そして必ず浄化の方法を探し出す。

 私は彼の存在を感じながら深い眠りに落ちていった。


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