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学園編

第八十四話

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階段の終わりを迎え、重そうな木の扉を2人がかりでぐっと押す。
2人がかりなのに、何故か扉は開いてくれない。

「なんで?!さっき入って来たときは私だけでも開けられたのに?!」

そう言って、ピンクちゃんは両手で押すことをやめ、ガンッと扉を蹴飛ばした。

「グッ…」

そうだよね、この扉かなり頑丈だから、そりゃ蹴ったら足痛くなるわ。
それに、ご令嬢が扉に蹴りをかますなんていけませんよ。私がやったらヘレナがすっ飛んで来てお説教くらうわ。床の上ではないだろうけど、どこかで正座させられて三時間は絶対にお説教される。

でも、さっきの話を聞いていて考えたのだけれど、もしピンクちゃんが来たときに簡単にこの扉が開いたというならば、何かあるはず。

これは実は押すタイプでなく引くタイプの扉では…?

そう思って取手をぐいっと引っ張ってみる。

バタンッ!

「ギャッ!何すんのよ!」

ダブルビンゴ!

そうか、ピンクちゃんは来る時は押して入って来たから帰る時も押して帰れると思っていたのか…。なるほど。だけど、この扉を開けた先にはまた扉があった。

あ、ごめん、ピンクちゃんわざとではないんだ。たまたま扉を引いた先にピンクちゃんがうずくまってて、勢いよく扉が当たってしまった。決して、決してわざとじゃないよ。うん、決して。

「開きましたわ。外に出ましょう、アイリス様」

私はそう言うとスタスタと開けた扉の先にあるもう一つの扉へと歩き出した。

「ちょ、あんた待ちなさいよ!」

度々で悪いけど、私は久しぶりに感じる外の光に待てを出されても待つことは出来ない。人間にとって陽の光とは生きるために必要不可欠なものだと感じる。

私は自分の知らぬ間に走り出していた。

そして、取手に力をかけて扉を開いた。よかった。今度も引いてあけるタイプだった。

そして、私は…。







ああ…やっと外に出れた…。






自分的には久しぶりの陽の光を堪能した。
あの部屋からやっと出れた。そう実感できる。だから、周りから聞こえてくる声に気づかなかった。


「ッ!…!…!」
「…!~!!!」

しばらく、ミーアキャットのようにのんびりと陽を浴びていたら、何か遠くから聞こえてくる。なんだろう?

「ちょっとあんた!この私を置いてくなんて…あんたッ!危ないッ!」

「え…?」

急にピンクちゃんの叫び声がはっきりと耳に届いた。

危ないって…?

刹那、私の背後から禍々しいオーラがした。



逃げなければ。



そう思ったときにはもう既に遅かった。


反応が遅れた私は捕まってしまったのだ。
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