80 / 115
学園編
閑末 グレン視点①
しおりを挟む
「ロゼリア様が拐われた…?」
俺は妹が何を言ったのか理解ができなかった。
今日は妹とロゼリア様が2人で出かけている日だった。
妹はロゼリア様とお2人で街へ行けるのが楽しみすぎて、当日まで大はしゃぎ。1週間も前から何を着るかで悩んでいた。
俺を服選びに付き合わせる妹はきっと自慢しているのだ。そして、挑発している。
俺も行きたい…。2人で街に出かけるなんて羨ましすぎる…。
そして、当日妹は集合時間の1時間も前に出かけて行った。ロゼリア様を待たせるなんて絶対にしてはならない。1日前から行ってもいいくらいだ。
そして、その後事件が起きてしまった。
妹がひどく慌てた様子で帰ってきたのだ。目の焦点があっていない。その様子に嫌な予感がした。
「ロゼリア様がッ、ロゼリア様がッッッ」
どうした?ロゼリア様がどうしたのだ?
『ロゼリア様が』しか言わない妹。その続きが気になるというのに。
「ひとまず落ち着きなさいビアンカ」
母様の一言で、ビアンカの目の焦点は定まってきた。
「…、申し訳ございません、取り乱してしまいました。説明致しますのでお父様、執務室へお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない」
「お父様、お母様、お兄様と私の4人以外は執務室に入らないように」
妹が周りの使用人たちに一声かけてから俺たちは執務室へと移動した。
「それで、ロゼリア様がどうされたというのだ」
「ロゼリア様が王太子殿下に連れ去られました」
は?連れ去られた?王太子殿下に…?王家に連れ去られたとなればこちらも簡単には動けない。
「何故ッ!何故お護りしなかった」
つい血が上って声を荒らげてしまう。その場に俺がいたとしても王太子殿下相手では敵わなかっただろうに。
「王宮へ連れて行かれ、その後も付き添おうとしたものの、睡眠薬のようなものをかがされ、眠らされたまま我が家へと帰されました」
苦々しい顔で妹は言った。
目を閉じて話を聞いていた父様が静かに目を開いた。
「…、我が家は今何者かに囲まれている。恐らく王太子殿下の遣いの者だろう」
父様に言われ、急いで窓の外を見てみると何やら兵士が数人我が家の周りにいた。
「今すぐにでもロゼリア様を助け出したいが…、この人数に囲まれていれば恐らく屋敷を出ることすら難しそうだ」
「ロゼリアちゃん…」
父様は歴代のロールズ伯爵家当主の中でも特に優秀な当主らしい。目を閉じることで、周りの音を聞き分け、周囲に何人の人間がいるかを判断できる。
簡単に言えばとても耳が優れているのだ。
父様は隠密としての能力が高く、当主としての腕前もきちんと備わっているため特に優秀と言われているらしい。
父様の説明はさておき、ロゼリア様を早く助け出さなければならない。そのためにまず策を考えねば…。
俺は妹が何を言ったのか理解ができなかった。
今日は妹とロゼリア様が2人で出かけている日だった。
妹はロゼリア様とお2人で街へ行けるのが楽しみすぎて、当日まで大はしゃぎ。1週間も前から何を着るかで悩んでいた。
俺を服選びに付き合わせる妹はきっと自慢しているのだ。そして、挑発している。
俺も行きたい…。2人で街に出かけるなんて羨ましすぎる…。
そして、当日妹は集合時間の1時間も前に出かけて行った。ロゼリア様を待たせるなんて絶対にしてはならない。1日前から行ってもいいくらいだ。
そして、その後事件が起きてしまった。
妹がひどく慌てた様子で帰ってきたのだ。目の焦点があっていない。その様子に嫌な予感がした。
「ロゼリア様がッ、ロゼリア様がッッッ」
どうした?ロゼリア様がどうしたのだ?
『ロゼリア様が』しか言わない妹。その続きが気になるというのに。
「ひとまず落ち着きなさいビアンカ」
母様の一言で、ビアンカの目の焦点は定まってきた。
「…、申し訳ございません、取り乱してしまいました。説明致しますのでお父様、執務室へお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「ああ、構わない」
「お父様、お母様、お兄様と私の4人以外は執務室に入らないように」
妹が周りの使用人たちに一声かけてから俺たちは執務室へと移動した。
「それで、ロゼリア様がどうされたというのだ」
「ロゼリア様が王太子殿下に連れ去られました」
は?連れ去られた?王太子殿下に…?王家に連れ去られたとなればこちらも簡単には動けない。
「何故ッ!何故お護りしなかった」
つい血が上って声を荒らげてしまう。その場に俺がいたとしても王太子殿下相手では敵わなかっただろうに。
「王宮へ連れて行かれ、その後も付き添おうとしたものの、睡眠薬のようなものをかがされ、眠らされたまま我が家へと帰されました」
苦々しい顔で妹は言った。
目を閉じて話を聞いていた父様が静かに目を開いた。
「…、我が家は今何者かに囲まれている。恐らく王太子殿下の遣いの者だろう」
父様に言われ、急いで窓の外を見てみると何やら兵士が数人我が家の周りにいた。
「今すぐにでもロゼリア様を助け出したいが…、この人数に囲まれていれば恐らく屋敷を出ることすら難しそうだ」
「ロゼリアちゃん…」
父様は歴代のロールズ伯爵家当主の中でも特に優秀な当主らしい。目を閉じることで、周りの音を聞き分け、周囲に何人の人間がいるかを判断できる。
簡単に言えばとても耳が優れているのだ。
父様は隠密としての能力が高く、当主としての腕前もきちんと備わっているため特に優秀と言われているらしい。
父様の説明はさておき、ロゼリア様を早く助け出さなければならない。そのためにまず策を考えねば…。
0
お気に入りに追加
169
あなたにおすすめの小説
婚約者の側室に嫌がらせされたので逃げてみました。
アトラス
恋愛
公爵令嬢のリリア・カーテノイドは婚約者である王太子殿下が側室を持ったことを知らされる。側室となったガーネット子爵令嬢は殿下の寵愛を盾にリリアに度重なる嫌がらせをしていた。
いやになったリリアは王城からの逃亡を決意する。
だがその途端に、王太子殿下の態度が豹変して・・・
「いつわたしが婚約破棄すると言った?」
私に飽きたんじゃなかったんですか!?
……………………………
6月8日、HOTランキング1位にランクインしました。たくさんの方々に読んで頂き、大変嬉しく思っています。お気に入り、しおりありがとうございます。とても励みになっています。今後ともどうぞよろしくお願いします!
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
ヤンデレお兄様から、逃げられません!
夕立悠理
恋愛
──あなたも、私を愛していなかったくせに。
エルシーは、10歳のとき、木から落ちて前世の記憶を思い出した。どうやら、今世のエルシーは家族に全く愛されていないらしい。
それならそれで、魔法も剣もあるのだし、好きに生きよう。それなのに、エルシーが記憶を取り戻してから、義兄のクロードの様子がおかしい……?
ヤンデレな兄×少しだけ活発な妹
執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?
陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。
この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。
執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め......
剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。
本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。
小説家になろう様でも掲載中です。
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
甘すぎ旦那様の溺愛の理由(※ただし旦那様は、冷酷陛下です!?)
夕立悠理
恋愛
伯爵令嬢ミレシアは、恐れ多すぎる婚約に震えていた。
父が結んできた婚約の相手は、なんと冷酷と謳われている隣国の皇帝陛下だったのだ。
何かやらかして、殺されてしまう未来しか見えない……。
不安に思いながらも、隣国へ嫁ぐミレシア。
そこで待っていたのは、麗しの冷酷皇帝陛下。
ぞっとするほど美しい顔で、彼はミレシアに言った。
「あなたをずっと待っていました」
「……え?」
「だって、下僕が主を待つのは当然でしょう?」
下僕。誰が、誰の。
「過去も未来も。永久に俺の主はあなただけ」
「!?!?!?!?!?!?」
そういって、本当にミレシアの前では冷酷どころか、甘すぎるふるまいをする皇帝ルクシナード。
果たして、ルクシナードがミレシアを溺愛する理由は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる