上 下
63 / 115
学園編

第四十七話

しおりを挟む
あれ?私の部屋に抱き枕なんてあったっけ…?

ギュッと抱きしめる力を強くすると、私の背中にある何かも力を強めている。

抱き枕って抱き返してくれる機能ついていたっけ?

そして、少し冷たい空気が入ったかと思えば、雪が降ってきたかのようにとても寒くなった。

あまりの寒さに抱き枕を更にギュッと抱きしめると、加えて更に寒くなった。


あまりの寒さに目を覚ますと般若の顔をしたイケメンが突っ立っていた。


「…」

驚きのあまり私は言葉を失う。

「やぁ、ロザリー。ようやくお目覚めかな?私は今、とても怒っているんだよ?どうしてかわかるよね?」

きっと、これは夢だな。目の前に王子がいるなんてありえない。

ほっぺを思いっきりつねってみる。

痛い。普通に痛い。

「ロザリー、これは夢ではないんだよ。頬をつねる姿も可愛いね」

いや、もしかしたら私は夢の中でも痛みを感じる系の人間かもしれない。

もう一度眠りについてしっかりと目を覚そう。

全く、夢も変なものを見せてくれるな。

そう思い、もう一度横になり眠る体勢になる。抱き枕もしっかりと抱いて。

「まだ私の言ったことが理解できないようだね…?」

まだ夢から覚めないのか…。随分と厄介な夢だな。

「…、起きてロザリー。目を覚ましな。諦めて現実に向き合うんだ」


…、ええ、知ってますとも、これが夢でなく現実だってことを。

でも、今目を覚ましたら絶対にあの部屋に連れ戻され、なおかつ王子からお説教を長々とされ、しまいには婚約を結ばなければならないなんていうとても、とても嫌なものが3つもセットされてくるなんて。

これは意地でも目を覚ましたくない。

絶対に、絶対に私は目を覚ましませんからねッ!

私は固く目を瞑る。

「へぇ…、そんな態度取るならこちらにも手がある」

そう言って、コツコツと靴を鳴らし、何かが近づいてきた。

私は片目だけうっすらと目を開ける。

何やら王子が私の目の前に来て何かをしようとしている。

そして、立て膝の体勢になったかと思えば…



チュッ



…?

え…?

私の脳内は混乱している。

今何が起こった…?

「まずは髪の毛から…、ふふっ、起きないのが悪いんだからね?」

妖艶な笑みを浮かべてニッコリと笑っている王子。

ええ、言葉通り髪の毛にキスを落とされました。

ヒィィィィ、未だ目覚めないけどまだ幼い殿下もこの部屋にいるんだから雰囲気を桃色に染めないでッ!

「次はこの悪い手かな…?さっさと外せばよかったのに…」

そう言って私の手を取る。


2度目はさせるかァァァァ

そう思いがばりと勢いよく起き上がる。

「おはようございます、王太子殿下。このような体勢で申し訳ございません」

チュッ

「王太子殿下呼びしたからお仕置き」

そう言って手にキスを落とされました。

「…、おはようございます、レオン様…」

「うん、それでいい」

王子は満足気に離す。


頼むから桃色ワールドにしないでください…。
しおりを挟む

処理中です...