上 下
54 / 115
学園編

第三十八話

しおりを挟む
「兄様に見つかると怒られそうだから兄様には内緒ね!」

怒られるとわかりつつ行動してしまう殿下が可愛いです。

「もちろんです」

私も咎められるだろうし、何よりこんなに可愛い殿下が怒られないようにせねば。


そこからしばらく歩いたところに殿下の部屋があった。

「ここだよ!」

ガチャっと扉が開かれ、中を見ればめちゃくちゃ大きかったです。

部屋の扉も大きいし、何より部屋が大きい。私の部屋の5倍くらいは絶対ある。

それに、1つ1つのものが豪華。煌びやかで目が痛い。

「天使様、どうしたの?」

「いえ…とても素敵なお部屋ですね」

「ほんと!嬉しい!お父様が僕のために選んでくれたの!」

「それは素晴らしいことですね」

「うん!」

そして、私は思いついてしまった。

殿下の部屋には書くものが絶対ある。つまり、私は殿下に書くものをもらえるのでは?!

「ギル様、この部屋に何か筆などはお持ちではないでしょうか?」

「あるよ!」

よしきた!

「ご無礼を承知で申し上げます。そちらを貸して頂くことは可能でしょうか…?」

王族の所有物をただの貴族が借りるなど大丈夫なのかわからないため、念のため先に詫びを入れておく。

「んー、どうしよっかなー?」

おっと?さすがにトントン拍子には進まないかな?

「天使様が僕と一緒にこの部屋に住んでくれるなら貸してあげる!」

んー、何故この国の王族たちは私をここに住まわせたいかなー。

無理なんだよな。でも手紙を書かないと向こうに心配かけるだろうし…。

「天使様…僕のこと嫌い…?」

少し涙を浮かべてチラッと上目遣いをしてくる殿下。

小悪魔級の可愛さ。

「いいえ!全く!むしろ可愛すぎて連れて帰りたいくらいですわ!」

ハッ、つい本音が…。

「嬉しい!天使様にそう言ってもらえるなんて!」

弾ける笑顔、素晴らしいです殿下。満点です。

「ギル様が弟なんて王太子殿下は幸せですわね」

そう私が言うと、殿下は少し困った顔をした。

「そうだと…いいな…」

今までは歳相応の無邪気な笑顔をしていたのに、急に大人びたような顔をしていた。

何かあるのだろうか。きっとあるのだろうけど、まだ出会ってまもない殿下の悩みを無闇に私が聞いてしまっていいのだろうか…。

悩んでいるとそれに気づいた殿下が慌てて言った。

「あ!でも、気にしないでね!兄様と僕仲良しだから!」

5歳の子に気を使わせてしまった。

精神年齢私だいぶ上なのに…。

「…それは…よかったですわ」

「それでさ、天使様。さっきのお話どうするの?」











しおりを挟む

処理中です...