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学園編

第三十六話

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「はじめまして。天使様、僕はギルバート・オルティスです」

そう言って優雅にお辞儀をした。

「…はじめまして…、私はロザリア・グランディエと申しまッ」

いつも通り挨拶されたから挨拶を返そうとしていた私。ヘレナという鬼コーチがいたから自然に挨拶が出来ていたが、途中で気づいてしまった。

今、と言わなかった?それに

オルティスといえばこの国の王族。そしてギルバートは第二王子の名前である。

つまり、私の部屋を開けたのはこの国の王族であり第二王子。

お兄様から接近禁止令が出てる王族ではないか!

「どうしたの?」

途中で固まっている私を不思議に思った第二王子がちょこんと私の顔を覗いてくる。

可愛い、連れて帰りたい。

ハッ、いけないいけない。王族誘拐罪的なもので処刑コースになってしまう。

ギルバート第二王子は銀髪で兄のレオナルド王太子殿下と同じ綺麗な碧眼である。

顔立ちはとても愛らしい。これは近い未来誘拐されそうだわ。

「いえ、大丈夫ですわ。ところで殿下はなぜ私のところへ?」

第二王子殿下は長いため殿下と短く呼ぶことにしよう。

「天使様!僕のことはギルって呼んで!みんな僕のことをそう呼ぶんだ!」

なぜこの国の王族は愛称で呼ばせたがるかな?!

私が愛称で呼んでもいいのかおろおろしていると、殿下が

「天使様、ギルって呼んでくれないなら僕お話ししてあげない!」

そう言ってぷいとそっぽを向いてしまった。

可愛い、可愛すぎる…。

この子が本当にあの王子の弟なのだろうか…?にわかに信じがたいことだけど…。

こんな弟が私にも欲しかったな…。

義弟には絶対にしたくないけど。

だって、義弟になるならあの王子と婚姻しなければいけないので…。謹んでお断りするわ。

「かしこまりました。ギル様」

殿下の可愛さにクスクス笑いながら私は答える。

「うん!」

にぱっと笑顔が溢れる。

ううっ、可愛すぎるよ…。殿下に会ってから私可愛いしか言ってない気がする…。

いや、本当に可愛いんでしょうがない。

「それではギル様、どうしてこの部屋にいらっしゃったのですか…?」

「えっとね、さっき廊下を歩いていたら兄様にあってね?」

ほうほう。

「それで、いつもだったら兄様は廊下を歩いている時は無表情なの!王宮のみんなは氷の王子って呼んでるくらいに!」

あの王子が?いつも無表情?ちょっと笑えてくるわ。

「もちろん、兄様は知り合いの前では笑顔だよ?僕と遊んでくれる時もニコニコしてるの!でも、今日は廊下ですれ違った時もニコニコしてたからみんな驚いてた!」

それは当たり前だよね。普段笑わない人がめっちゃニコニコしてるなんて…。私だったら嵐の前触れか?!ってなるかも…。

「だからね、兄様にどうして今日はニコニコしてるの?って聞いてみたの!そしたらね…」




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