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第十話

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王宮から帰る馬車にてお兄様は何も話さなかった。ずっと馬車の窓から景色を見て、物思いにふけっていた。

話しかけようと思っていたけれど、お兄様との仲を保ちたいため、余計な詮索はしないことにした。




私も窓から景色を眺めていると、段々屋敷の近くの風景に変わっていった。

そして、馬車はグランディエ伯爵家に到着した。

「ロゼリア」

馬車から降りる際お兄様がまた手を差し出してくれた。

「ありがとう、お兄様」

馬車の中で何も話さなかったけれども、こういうエスコートはちゃんとするお兄様。

これは将来有望な攻略対象になりそうだわ。私攻略対象誰か知らないけど。

あと、お兄様の嫁に!と縁談を申し込む女性が多そう…。私あれかな?
『妹だからってアシュレイ様と近すぎるのよ、フンッ!』
とかご令嬢たちに言われないかな?

そんなことを考えていると、手を取って馬車を降りたのになかなか動き出さない私を不思議に思ったのか

「ロゼリア、どうしたの?」

コテンっと首を傾げる

え、可愛い。そう言えばお兄様も美形だったわ。危ない、よだれが…。

「何でもありませんわ」

ちょっと返しが素っ気なかったかな?

「そう。あ、そうだ。王太子殿下は女性なら誰でもあんなことするからね?勘違いしないようにね?」

何やら黒い笑顔が見えた気がする。

「わかっていますわ」

恐怖を覚えた私はそそくさと屋敷の中に入っていった。

「…」

だから、その後お兄様が発した言葉に気づくことはなかった。

お兄様の一言が私の平凡を邪魔することになるということに…。




「お帰りなさいませ。王太子殿下とのお茶会はいかがでしたか?」

屋敷の中に入ると、ヘレナが待ち構えていた。

「とても楽しかったわ」

嘘です。緊張しまくって全然楽しくなかったです。

でも、本音を言ったらヘレナとお話合いになりそうだから。

「それはよかったです。粗相もしませんでしたか?」

ニコってしながら聞いてくるヘレナ。怖いです、ヘレナさん。後ろに般若が…。

「もちろん。木にも登ってないし、極力話さず、静かに聞いておりましたわ」

本当。今日木にも登らずに静かにしながらお茶飲んでたから。

王宮のお菓子は見た目だけじゃなくて、味も美味しかった。もっと食べたかったし、なんかの箱に入れて持って帰りたいレベルでした。

「まぁ!木に登らない、静かにお話を聞いていることが出来たのですね!素晴らしい成長ですわ!お嬢様!」

褒めてるのか貶してるのかどちらだろうか、これは…。

まぁ、何はともあれ、王子とのお茶会終わったし、しばらくは暇でしょう。

そう願う私であった。

__________________キリトリ__________________
宵丸です。
前回で王太子殿下の容姿の説明をし忘れていたため、こちらで補足させて頂きます。
王太子殿下は金髪碧眼(空のような青い瞳)を持っています。もちろんのこと美形(ボソッ)
何人か登場人物が増えてきたら登場人物の一覧出します!
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