41 / 100
第五章 田村VSマッドサイエンティスト
着替え室にて
しおりを挟む
ハッタリとは思えなかった。映画のヒーローでも何でもない俺のこと、少なからず気圧され萎縮したが、予想される脅迫と暴行をも素早く覚悟の内に呑み込んで「ああ、そう。若い者ね」と言い残しそのままミキと着替え室へと入って行った。唇を噛んだママが表へと飛び出すのが後ろ目に見えたが最早後の祭りだ。なるようになるだろうさ。
「田村さん、手帳を出して」着替え室に入って内側から鍵を掛けたミキがいきなり俺に要求する。「手帳…?よし来た」ミキの意図は未だ知れなかったが俺は素早く手帳とペンを出すと筆記の体制を取った。ミキはハンガーに掛けたコートの内ポケットからカードケースを取り出すと素早くめくって身分証明書と保険証を俺に提示して見せた。合点した俺はそこに記載されている名前・住所、および会社名とその住所電話番号を一気に手帳に書きつける。今しも若い者が怒鳴り込んで来ないか気が焦るが間違いのないように正確に書き写し、さらに今一度確認し終えた。ドアの外から荒々しく迫りくるだろう足音はまだしない。それを危惧しながらも俺はミキに意図を確認する。
「ミキ、これは、この身分証の人は、君への身体の提供者だね?」
「当然、そうよ。わたし此処に来る前に路上でこの身分証を、無意識の内にポケットから探って確認してたの。(自分の身体を指差しながら)たぶんこの身体を持つ女性がとても気にしてるものなんじゃないかしら?」
「そうか…。しかしミキ、これはいったいどういうことなの?この、えーっと、ショ、ショウ…ダイエイ(邵廼瑩)?って読むのかな?この人物を俺に探れっていうことかい?」
「ええ、そう。だってこれしかわたしには方法がないのよ。あなたのお陰で今は自分を取り戻しているけど、(自分を指差して)いつまたこのミキに、あいつに与えられたパーソナリティに戻ってしまうかわからない。だから…」と早口で云って一旦ミキはドアの外に聞き耳を立てた。いや、というかアイツの気配…いや、意向を感じ取っているのだろう。
「田村さん、手帳を出して」着替え室に入って内側から鍵を掛けたミキがいきなり俺に要求する。「手帳…?よし来た」ミキの意図は未だ知れなかったが俺は素早く手帳とペンを出すと筆記の体制を取った。ミキはハンガーに掛けたコートの内ポケットからカードケースを取り出すと素早くめくって身分証明書と保険証を俺に提示して見せた。合点した俺はそこに記載されている名前・住所、および会社名とその住所電話番号を一気に手帳に書きつける。今しも若い者が怒鳴り込んで来ないか気が焦るが間違いのないように正確に書き写し、さらに今一度確認し終えた。ドアの外から荒々しく迫りくるだろう足音はまだしない。それを危惧しながらも俺はミキに意図を確認する。
「ミキ、これは、この身分証の人は、君への身体の提供者だね?」
「当然、そうよ。わたし此処に来る前に路上でこの身分証を、無意識の内にポケットから探って確認してたの。(自分の身体を指差しながら)たぶんこの身体を持つ女性がとても気にしてるものなんじゃないかしら?」
「そうか…。しかしミキ、これはいったいどういうことなの?この、えーっと、ショ、ショウ…ダイエイ(邵廼瑩)?って読むのかな?この人物を俺に探れっていうことかい?」
「ええ、そう。だってこれしかわたしには方法がないのよ。あなたのお陰で今は自分を取り戻しているけど、(自分を指差して)いつまたこのミキに、あいつに与えられたパーソナリティに戻ってしまうかわからない。だから…」と早口で云って一旦ミキはドアの外に聞き耳を立てた。いや、というかアイツの気配…いや、意向を感じ取っているのだろう。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
赤い部屋
山根利広
ホラー
YouTubeの動画広告の中に、「決してスキップしてはいけない」広告があるという。
真っ赤な背景に「あなたは好きですか?」と書かれたその広告をスキップすると、死ぬと言われている。
東京都内のある高校でも、「赤い部屋」の噂がひとり歩きしていた。
そんな中、2年生の天根凛花は「赤い部屋」の内容が自分のみた夢の内容そっくりであることに気づく。
が、クラスメイトの黒河内莉子は、噂話を一蹴し、誰かの作り話だと言う。
だが、「呪い」は実在した。
「赤い部屋」の手によって残酷な死に方をする犠牲者が、続々現れる。
凛花と莉子は、死の連鎖に歯止めをかけるため、「解決策」を見出そうとする。
そんな中、凛花のスマートフォンにも「あなたは好きですか?」という広告が表示されてしまう。
「赤い部屋」から逃れる方法はあるのか?
誰がこの「呪い」を生み出したのか?
そして彼らはなぜ、呪われたのか?
徐々に明かされる「赤い部屋」の真相。
その先にふたりが見たものは——。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる