バー・アンバー 第一巻

多谷昇太

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第四章 娼婦殺人事件

必死に推理する田村

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しかしそれならば今のミキにおけるこの瞬間、この世の今の現実はどうなのかというと(これ以前のレクチャーもどきも皆そうだが)、ここで俺の宗教知識が役に立つ。説明するのにそんなに難しくはない。前言した通りのことだ。誰でも夢の中にいる時、そこが夢とは思っていまい?その夢の世界がいかなるPTOだったとしても、そこにおける自分の年令も境遇でさえも我々はそれをそのまま受け入れてしまうのだ。それで云えば眼前のミキは今そのミキと云う名前を与えられ、そしてこちらは恐らくだが、俺への美人局役を仰せつかっているのだろう。そういうPTOを与えられているのだろうが問題は〝誰から?〟ということである。話がややこしくなって申しわけないが逆の立場に立って、我々肉体を持つ者が夢の世界に行ってそしてそこにおける自らのPTOを抱く時、これは恐らくその造り手は自分自身ではないかと思うのだ。つまり自分の心が最も引かれるような状況、PTOを夢の場面として自らが造ってしまう分け。この辺は先にミキが云ったピュグマリオン王とその被創造物たる理想の女性とも通じる話なのだが、ま、それは省くとして、立場を戻して、では今この現実のシチュエーションをミキという肉体に宿る霊界の霊が望んだ分けでもないだろうし、まして造り出した分けでもないだろう。なぜならこの霊と俺は一面識もないからだ。すればこの霊にPTOとそこにおける役目を与えた存在がいると推理した次第である。それで、それ加うるに今ひとつ語るべき重要なファクターがあって、それは前述したごとくに俺はこの霊が✕✕OL殺人事件の被害者本人であると思っているのだが、この真の経歴を持つ霊がミキと云うシチュエーションを引っぺがして時々顔を出すということである。それは突然の「お父さんは、お父さんはどこですか?わたし、お父さんに会いたい!」なる発言に現れた通りのことだ。これはしかしなぜそうなるのか?思うにミキと云うPTOを与えられたこの本当の、つまり被害者の霊は恐らくこのPTOにいる方が楽なのだ。

【女よ、一人ぼっちで何を悲しんでいる?来たれ、我と。現(うつ)し世へと汝を誘なわん…】
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