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第三章 君は何者?
よし、俺が好き勝手を云ってやる
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再びの〝女を泣かせるような〟セリフを述べてミキの本質を誘おうとしたのだがミキは「えー?それこそ本当?ウフフ」と軽くいなす。しかしそう云いながらも口元に運んだグラスを持つ手が小刻みに震えている。内心で未だに動揺しているのは明らかだ。本音を云いたいのだろうが盗聴装置だか何だか知らないが恐らくここの会話は筒抜けなのだ、誰かに。それで俺はミキの代わりにという分けではないが、ここら辺りがミキの本音だろうという話題を提供することにした。ミキが云うのでなければ俺が何を好き勝手なことを云おうとお構いあるまい…?
「本当も本当。必ず君を守っちゃう」
「ウフフ、守ってくれる?嬉しい」
「うん…それでさ、俺さっき自分がフリーライターと云ったけどさ、実は俺の専門は介護関係なんだ」
「介護?」
「うん、そう。地味な分野だけど結構いまの時代のキーポイント的なところがあるんだよ。なぜって老人が多いからね、今は。いやそれどころか、今後団塊の世代が後期高齢者に移って行くにつれて、この介護事業は社会の一大ネックとなって行くか、あるいはむしろ社会を牽引する成長産業になって行くのか、なかなかダイナミズムなところがあるんだよ。君、さっき〝お父さんに何とか…って云ったけれど、どうなの?ミキのお父さんは。元気?まだまだ介護どころか矍鑠(かくしゃく)としてらっしゃるのかな?ハハハ」
会話を誘う俺の愛想笑いにも拘らずミキの表情が一瞬泣き顔っぽくなった。心の琴線に触れたのだろう。しかしそれをどうにか堪えてみせ「ううん、矍鑠どころかもう亡くなったわ。もう20年も前にね」。20年前というとお父上の享年は2001年頃か。ミキの年令が35かひょっとしてそれ以上にも見えることからして当時の彼女の年は20才くらいだったろうし、それから類推すればお父上の逝去はだいぶ早かったと思われる。不憫に思えたがさらに突っ込んでみる。
「えー?本当?それならお父さん、ずいぶん若くして亡くなったんだね。ひょっとして俺と同じくらいかな?俺、いま52だけど」
「へえ、田村さん、52なんだ…うん、そう。それなら私の父とちょうど同じよ。お父さんも52才で亡くなったから…ちょっとご免なさい」と云ってミキはグラスをいま一つ取り出し、自分用にチェイサーをこしらえ半分ほどを一気に飲んだ。だいぶ喉が渇いてるようだ。
「本当も本当。必ず君を守っちゃう」
「ウフフ、守ってくれる?嬉しい」
「うん…それでさ、俺さっき自分がフリーライターと云ったけどさ、実は俺の専門は介護関係なんだ」
「介護?」
「うん、そう。地味な分野だけど結構いまの時代のキーポイント的なところがあるんだよ。なぜって老人が多いからね、今は。いやそれどころか、今後団塊の世代が後期高齢者に移って行くにつれて、この介護事業は社会の一大ネックとなって行くか、あるいはむしろ社会を牽引する成長産業になって行くのか、なかなかダイナミズムなところがあるんだよ。君、さっき〝お父さんに何とか…って云ったけれど、どうなの?ミキのお父さんは。元気?まだまだ介護どころか矍鑠(かくしゃく)としてらっしゃるのかな?ハハハ」
会話を誘う俺の愛想笑いにも拘らずミキの表情が一瞬泣き顔っぽくなった。心の琴線に触れたのだろう。しかしそれをどうにか堪えてみせ「ううん、矍鑠どころかもう亡くなったわ。もう20年も前にね」。20年前というとお父上の享年は2001年頃か。ミキの年令が35かひょっとしてそれ以上にも見えることからして当時の彼女の年は20才くらいだったろうし、それから類推すればお父上の逝去はだいぶ早かったと思われる。不憫に思えたがさらに突っ込んでみる。
「えー?本当?それならお父さん、ずいぶん若くして亡くなったんだね。ひょっとして俺と同じくらいかな?俺、いま52だけど」
「へえ、田村さん、52なんだ…うん、そう。それなら私の父とちょうど同じよ。お父さんも52才で亡くなったから…ちょっとご免なさい」と云ってミキはグラスをいま一つ取り出し、自分用にチェイサーをこしらえ半分ほどを一気に飲んだ。だいぶ喉が渇いてるようだ。
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