多谷昇太「歌詞集」

雅の章

千年の歌姫たちにⅡ

紫式部へ:「君が代と言祝ぎなしておもねりて身は浮舟の紫式部」
※１．紫式部は「水鳥をみづのうへとやよそに見むわれも浮きたる世をすぐしつつ」と宮仕えの不安を詠み、「めづらしき光さしそふさかづきはもちながらこそ千代もめぐらめ」と仕える中宮彰子の御子誕生に‘おもねり歌’を献上している。その心情は時に浮舟のごときたよりないものでもあったろう。
※２．さて皆さん全世界に鳴り響く大作家たる式部ならばさぞや福運に充ち充ちた境涯であったろうと思われましょうが、上↑やさらにはほぼ辞世歌に当たるこの歌「年暮れてわが世ふけゆく心の中のすさましきかな」とか、あるいは「源氏物語を私の形見とは思うが果していつまで残り、読み続けられるものやら…」などと、甚だ寂しげで心もとない心情を晩年に吐露してもいるのです。ですからどうか皆様、式部を超人化などしないで〝人間〟式部として彼女を愛し、私の拙歌数編に節をつけて口ずさんでくだされば幸甚です。

　　　　　　　　　　　　　　【ふたたび紫式部像】

和泉式部へ:「風ともに去りにし君のありしまま千年（ちとせ）も枯れぬこは和泉かな」
※彼女を炎の女スカーレット・オハラと見れば斯く詠みました。

【貴船神社…和泉式部にまつわるパワースポットだそうです。彼女は水商売の女性たちにとっては守り神だそうです】