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久佐賀義孝
彼は朝鮮宰相…?
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経験は生かして使えで、かすかにその時のことを慮っての邦子を連れぬただ一人での訪問でもあったのだ。ところがこの久佐賀という男はその一葉の魂胆を見透かした、いや瞬間で見抜いたかのごとくに一葉と対応したのである。実際その眼差には尋常ならざるものがあって、どこか嘘のつけない洞察力というか、相手の心の在り処いかんを捉え得る能力があるとも見えた。12才年上ということもあるだろうがとてもそれだけではない、その方面でのもともとの才能と、経て来た何某(なにがし)かの鍛錬、または習得した学問の力とでもいうものが感じられた。ひととおり一葉の口上を聞いたあとで義孝(久佐賀の下の名)は単刀直入に「まず率直に云ってあなたには金運というものが、その卦がまったく感じられない。投資をしたい、学びたいとのことですがそれはお止めになったほうがいいでしょう。あなたの本来の力、星は、そんな卑小なものに存するのではないと思われます」と言明したのだった。正直云ってこの言葉に一葉は掌(たなごころ)を握られるような危惧を一瞬おぼえた。云い方が悪いが「ひとつこの男をうまくごまかして、利用して」という、謂わば始めっから相手を二十二宮的な人物と捉えての訪問だったのだ。つまり相手があらぬことでの欲得で来るだろうから、こっちだってそれなりに策して行くしかないとの心積もりだった。それへ、たたらを踏まされたどころではない、思惑違い甚だしきを突かれた格好となったのである。いや、一面で思惑違いではないところもあった。つまり「あらぬ欲得」のことであるが、それにしたってそれに応じるような素振りを見せつつもなんとか金だけを融通させようと一葉は策していたのだ。しかしそんな演技が通じるような男ではないことを始めの一言で一葉は知らされた。思わず金策のことを一瞬でも忘れて「でもなぜ、そんなことがおわかりになるのです?始めの一瞥だけで。易というものは人を見抜く、見抜けるものなのでしょうか?」と尋ねざるを得なかった。義孝は軽く笑いながら「いや、決して自慢をするわけではありませんが、こう見えても私は朝鮮で、李王朝国主たる大院君の施政を一手に請け負ったことがあるのです。
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