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雲の上の錐最戸医院
「君はもうすぐ死ぬよ」
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錐最戸「林君」
林「あ、はい」
錐最戸「君は‘誰が見ていなくともお月さんが見ているよ’、という言葉を知っているかね?またシェークスピアならぬ、我が国の西郷南州の言葉、‘人が見ていぬ時ほど我が身を正せ’という言葉を知っているか」
林「はあ、どこかで聞いた覚えはあります」
錐最戸「それについてどう思う?」
林「どう思うって……先生こそなぜそんなことを聞かれるんです?」
錐最戸「まず喫煙に逃げる弱さということを、精神科医としては指摘したいが、それのみならず、おそらく、ああいったことをされる君の悪癖、弱さというものが他にもあったのじゃろ。云いたくなければ聞かないが、喫煙も含めて、そういう君のもろもろの悪癖を矯正すること。それが肝要だという意味で申し上げたのじゃよ」
林「いや、確かに、そ、それはその通りですが……(居直るように)ふん……どちらがより悪いかの問題ですな、それは。人には誰にでも欠点や悪癖があるものです。しかしそれを捉え続けて世の的とし、弾劾し続け、あまつさえ人を寝かせないなどとは、これははたして人間のすることですか!?」
錐最戸「それをしているのは世間じゃあない、すべての人々じゃあない。君はだな、なにごとも一緒くたに見過ぎる、断定しすぎる。それを精神科では統合失調症的性癖と云うのだよ。‘世間なんて人間なんて所詮こんなもの’と断定していれば、突き放しておれば、それで君自身は傷つかないで済むのだろう。しかしね、林君、それではいくばくもなく、君の居場所がなくなるよ」
林「え?居場所がなくなる?」
錐最戸「そう、役から降ろされるということだ。そして人生が舞台であるとするならばだ、降役イコール、それは死ぬということだよ」
林「えー!?死ぬ!?俺がですか……自殺でもしますか(笑い)」
錐最戸「そうだろうな。私ならむしろそれを推奨するね。演出家の言葉で云うならばだ、この大根!ヘッポコ役者め、引っ込め!顔洗って、演技を修業し直して来い!……とでも云うだろうな」
林「あ、はい」
錐最戸「君は‘誰が見ていなくともお月さんが見ているよ’、という言葉を知っているかね?またシェークスピアならぬ、我が国の西郷南州の言葉、‘人が見ていぬ時ほど我が身を正せ’という言葉を知っているか」
林「はあ、どこかで聞いた覚えはあります」
錐最戸「それについてどう思う?」
林「どう思うって……先生こそなぜそんなことを聞かれるんです?」
錐最戸「まず喫煙に逃げる弱さということを、精神科医としては指摘したいが、それのみならず、おそらく、ああいったことをされる君の悪癖、弱さというものが他にもあったのじゃろ。云いたくなければ聞かないが、喫煙も含めて、そういう君のもろもろの悪癖を矯正すること。それが肝要だという意味で申し上げたのじゃよ」
林「いや、確かに、そ、それはその通りですが……(居直るように)ふん……どちらがより悪いかの問題ですな、それは。人には誰にでも欠点や悪癖があるものです。しかしそれを捉え続けて世の的とし、弾劾し続け、あまつさえ人を寝かせないなどとは、これははたして人間のすることですか!?」
錐最戸「それをしているのは世間じゃあない、すべての人々じゃあない。君はだな、なにごとも一緒くたに見過ぎる、断定しすぎる。それを精神科では統合失調症的性癖と云うのだよ。‘世間なんて人間なんて所詮こんなもの’と断定していれば、突き放しておれば、それで君自身は傷つかないで済むのだろう。しかしね、林君、それではいくばくもなく、君の居場所がなくなるよ」
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錐最戸「そう、役から降ろされるということだ。そして人生が舞台であるとするならばだ、降役イコール、それは死ぬということだよ」
林「えー!?死ぬ!?俺がですか……自殺でもしますか(笑い)」
錐最戸「そうだろうな。私ならむしろそれを推奨するね。演出家の言葉で云うならばだ、この大根!ヘッポコ役者め、引っ込め!顔洗って、演技を修業し直して来い!……とでも云うだろうな」
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