エッセイのプロムナード

多谷昇太

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引っ越し顛末記(一)

霊視と霊視社会

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と原作では以上なのだが、その後「悪魔の追跡」と改題されてつくられた映画ではストーリーが些か違っていた。妻をその場から拉致してなんとか追っ手を振り切り、車で二人は村から逃走するのだ。ところが行く先々、立ち寄ったガソリンスタンドでも雑貨店でもホテルでも、またなんと駆け込んだ警察署でも、二人に対応する店員や警察官たちの様子が皆おかしい。いたずらに引き止めようとし、どこかに電話をするようだ。結局二人は追っ手の手に落ち、その後の結末は原作の通り…なのだった。
 さてなぜこんな話を冒頭に持って来たか…なのだが、実は件のアパート退出後車上生活を経て横浜市港南区のアパートに入居するまでの数年間と、またそれ以降いまに至る、実に都合17年間に及ぶストーカーからの私の‘逃避行’がこのストーリーのごとくだったからである。前作でも記したが件のアパートを出たあとも行く先々に例のストーカー四人組が現れた。そのことと、先の映画で逃避行を続けた夫婦の事情をなぜか皆が(ガソリンスタンド等の店員たちが)知っていて、二人の所在を村に知らせたという不可解さが私にも符号するからだ。またそれと同時に冒頭のサブタイトルに掲げた「信じられない5つのこと」の一つとして、この不可解さを私はまず挙げてみたい。どういうことか、次に記して行こう。
 ストーカーのヤクザども、すなわち四人組はあたかもそれが彼らの‘鳴き声’ででもあるかのように「プータ、プータ」と私を連呼する。つまり罵り続けるのだが、その彼らとは何の関係もない筈の、世間の少なからぬ一般人たちがこれと同じことをするのだ。同じ鳴き声を立てる。すなわち「プータ、プータ」と私を罵るわけだ。面識も何もない赤の他人である人たちがなぜ、あたかも私と私の事情を知っているかのように私を罵り、からかうのか、これが私には皆目わからなかった。そんな世間や人たちが、前期の本と映画内で‘アブノーマルがノーマルを駆逐する’ような、異常で不可解な社会のごとしと私の目には写る。そこが逃避先の埼玉県であろうが茨城県であろうが津々浦々でこの罵りを受けまくるのだ。これが絶え間なく続くとノイローゼのようになってめげること甚だしい。まるで西部劇のお尋ね者のように私の指名手配書が全国にまわっている?とでも思ってしまうほどだ。しかし前回のエッセイで記したがごとくいまはその因もわかっている。つまり原因は霊視だ。最初のアパートで私の部屋の真下にいた夫婦者の女房が為したがごとき霊視である。ただ当時はこの霊視というものがかくも広範に、かつ大勢の人間によって為されるものだとは思わなかったので、車上生活の苛みとともにダブルパンチとなって容赦なく私を打ちのめした。この霊視と、この(謂わば)霊視社会が、5つの信じられないことのまずひとつなのだが、ふたつ目はその(悪)霊視の信じられない‘働き方’ということを挙げねばならない。やや長くなるが以下に記して行こう。
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