エッセイのプロムナード

多谷昇太

文字の大きさ
上 下
24 / 65
スクールカーストへの考察

純文学とは

しおりを挟む
語法や文体に於いても況やをやで、彼の上田秋成でさえその流麗華麗なる美文に嫉妬したという紫式部や、近くはその語彙の豊富さや文語口語体ともどもインテリジェントを極めた芥川龍之介などと比べれば、抑々比較にさえならないわけです。畢竟過去綿々と続いた文学の系譜は今時を以ってミッシングリングとなり断ち切られざるを得ないのでしょうか?文学評論のジャンルは費えるのか…なのですが、ここにおいて伊藤氏の云う社会評論と文学評論の関係について思いを馳せる次第です。文学を評論するにあるいは文学を為す上において社会(評論)と文学(評論)は車の両輪のようなもので、互いが互いを単にイメージ化する程度の関係であるとはとても思えません。抑々純文学とは日本独特の呼び名だそうで「大衆性」に対する「芸術性」的なものなのだそうです。然るにその系統の雄たる「文藝」「群像」「文学界」は発行がふるわず、方やの「すばる」や「野生時代」などが優勢なのだとか。またそれに止まらず今や敢て両者を分ける必要すらもなく、後者の媒体の中に前者も含まれるようになった、とも云われているようです。私などは前記した偽作文学と近代文学の別離辺りに所謂純文学と称するものの萌芽があるようにも思えます。どういうことか。伊藤氏の西洋哲学云々とも重なるのですがこの頃に成された哲学的な自己への把握、分析、いわゆる理性や知性、感情、意志とはなんぞや、畢竟我とは、人間とは何なのかと改めて追及する、そう意識することを始めた辺りに純文学と称するものの萌芽を見るわけです。この「自己の発見」とでも云うべき思考法は横文字で云えばインナートリップとでもなり、自己の中にある小宇宙への旅立ちなのではないでしょうか。改めて向かい合うならばそこは未だ謎に充ちた神秘の世界なのであり、真剣に追及するならば宗教の世界にまで誘われるものなのかも知れません。その深度によって純文学の良し悪しさえも決まることでしょう。

          【「小説神髄」を著した坪内逍遥の碑】
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

その後の愛すべき不思議な家族

桐条京介
ライト文芸
血の繋がらない3人が様々な困難を乗り越え、家族としての絆を紡いだ本編【愛すべき不思議な家族】の続編となります。【小説家になろうで200万PV】 ひとつの家族となった3人に、引き続き様々な出来事や苦悩、幸せな日常が訪れ、それらを経て、より確かな家族へと至っていく過程を書いています。 少女が大人になり、大人も年齢を重ね、世代を交代していく中で変わっていくもの、変わらないものを見ていただければと思います。 ※この作品は小説家になろう及び他のサイトとの重複投稿作品です。

【短編集】或るシンガーソングライターの憂鬱/或るシングルマザーの憂鬱

ふうこジャスミン
ライト文芸
●【連載中】「或るシンガーソングライターの憂鬱」 闇堕ちした元シンガーソングライターの、変人たちに囲まれた平凡な日常 ●【完結】「或るシングルマザーの憂鬱」シングルマザーの小北紗季は、職場の変人メガネ男と恋愛関係に発展するか!?

安楽椅子から立ち上がれ

Marty
ライト文芸
 女生徒≪小沢さん≫は、学校の不思議な変わり者。あらゆる行動が常識外れでエキセントリックなお方である。五月三十日。主人公、山田島辰吉(やまだじまたつよし)は不運なことに、学校の課外活動を彼女と二人きりで行うことになってしまった。噂に違わぬ摩訶不思議な行動に面食らう山田島であったが、次第に心が変化していく。  人に理解され、人を理解するとはどういうことなのか。思い込みや偏見は、心の深淵へ踏み込む足の障害となる。すべてを捨てなければ、湧き上がったこの謎は解けはしない。  始まりは≪一本の傘≫。人の心の糸を紡ぎ、そして安らかにほどいていく。  これは人が死なないミステリー。しかし、日常の中に潜む謎はときとして非常に残酷なのである。    その一歩を踏み出せ。山田島は背を預けていた『安楽椅子』から、いま立ち上がる。

怪談実話 その4

紫苑
ホラー
今回は割とほのぼの系の怪談です(笑)

衛星のスタジォーネ

gaction9969
ライト文芸
衛星のように廻る、それが人と人との絆、人生というものなのかも知れません……(誰

夢はお金で買えますか? ~とあるエンタメスクールの7カ月~

朝凪なつ
ライト文芸
東京メディアスクール。略してTMS。 アニメ、ゲーム、キャラクターデザイン、漫画、小説・シナリオ、声優のプロを育成する専門スクール。 一年で約100万円かかる二年制のスクールに夢を叶えるために通う生徒たち。 ・スクールに仕方なく就職した佐久間晧一(事務員、契約社員) ・ライトノベル作家を夢見る大学生の木崎彩(小説・シナリオ学科) ・声優を目指して入った会社員の高梨悠理(声優学科) ・イラストで食べていきたいと会社を辞めた河野いちか(キャラクターデザイン学科) スクールで働く者と、夢を目指して通う者たち。 様々な人とそれぞれの思いが交錯するスクールでの、それぞれの物語。 *+*+*+* 以前、別のペンネーム、『夢は甘いか、苦いか、しょっぱいか』というタイトルでWeb連載した作品を 改題、本文修正して投稿しております。

社畜がひとり美女に囲まれなぜか戦場に~ヘタレの望まぬ成り上がり~

のらしろ
ライト文芸
 都内のメーカーに勤務する蒼草秀長が、台風が接近する悪天候の中、お客様のいる北海道に出張することになった。  移動中の飛行機において、日頃の疲れから睡魔に襲われ爆睡し、次に気がついたときには、前線に向かう輸送機の中だった。  そこは、半世紀に渡り2つの大国が戦争を続けている異世界に直前に亡くなったボイラー修理工のグラスに魂だけが転移した。  グラスは周りから『ノラシロ』少尉と揶揄される、不出来な士官として前線に送られる途中だった。 蒼草秀長自身も魂の転移した先のグラスも共に争いごとが大嫌いな、しかも、血を見るのが嫌いというか、血を見て冷静でいられないおおよそ軍人の適正を全く欠いた人間であり、一人の士官として一人の軍人として、この厳しい世界で生きていけるのか甚だ疑問だ。  彼を乗せた輸送機が敵側兵士も多数いるジャングルで墜落する。    平和な日本から戦国さながらの厳しいこの異世界で、ノラシロ少尉ことヘタレ代表の蒼草秀長改めグラスが、はみ出しものの仲間とともに仕出かす騒動数々。  果たして彼は、過酷なこの異世界で生きていけるのだろか  主人公が、敵味方を問わず、殺さずに戦争をしていく残酷シーンの少ない戦記物です。

(ほぼ)5分で読める怖い話

アタリメ部長
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

処理中です...