エッセイのプロムナード

多谷昇太

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アジア小説との出会い

メリーゴーランドサーカスの女・2

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韓国ほど受験競争がきびしい国はほかにないだろう。そしてそれが恰もそのまま社会で‘終生’繰りひろげられるような生存競争のきびしい国もないのに違いない。「パリ、パリ(早く、早く)」とせかす声に終生追い立てられるような、互いの互いに対するせこさに満ちている国?…とでも見えてくる。事実同国の他の小説で、あるビジネスマンの家庭を描いたものがあるのだが、家計・残業尽くしの仕事・会社での人間関係・子供の教育・投資などなど、あたかも分刻みのごとき、時間に追い立てられるような毎日の生活が描かれている。果ては「韓国を見限って米国へ移住…」とか、「いや、カザフスタン(ウズベキスタンだったか?)がいい。(石油)投資に持って来いだ。住むならカザフスタンだ…」などという会社や家庭での会話があって、時間・空間的に生き急いでいる観が否めない。しかしそれでいながら筆頭にかかげたような、疲れ切ったような社会の一面もあることも確かなのだ。同国の自殺率は世界一であるとも云う。世間体や生存競争のせせこましさと人間原存在との矛盾、また都会と田舎に住む人たちの間におけるあたかも異国人同士ででもあるかのような意識の違い、果ては朝鮮戦争時における同民族同士での殺戮の惨さを、無理にでも封印してしまったかのような闇の意識もまだ残っていて、これらの無明を探り行くような同国現代文学の使命は重かろう。♬アーリラン、アーリラン…♬と歌いながらこの民族が悲しみの峠を越えて行くような、「アイゴー(哀号)」の悲哀が民族の素地として感じられる。普段に見せるエネルギッシュな表面とはまったく異質の、しかし愛すべき、民族の同苦同悲の結託が一大事には出来するようだ。

               【韓国・太極旗】
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