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第五章 僧房
チャンドリカ、トヨンデクレ
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直後に俺同様に「タダ、チャンドリカ、トヨンデクレ」と云って微笑む。その対座する彼の醸す雰囲気が実にいい。人を、他人を受け入れよう、理解しようとする姿勢がいかにもにじみ出ていて、問わず語り風に俺は自分のことを彼の前で語った。もっとも折々短く‘此処までの経路は?’とか、それを聞くと‘ではヨーロッパはどうだった?’などと聞かれたからなのだが、とにかく柔和な仏像のごとくに終始受容的だった。しかしあとからして思えばそれは俺の英語が拙いことを彼がすぐに悟ったからであり(前述の通りヒアリングがまったく成ってないことを)、聞き手に徹するしかなかったのかも知れない。その時はそれに気づかずに、自分がほぼユーラシア大陸を一周して来たこと、ヨーロッパで1年半ほど過ごしたこと、バイトしたこと等を語り、果てはヨーロッパ人は有色人種を差別することまで一方的に語る始末。彼のことを尋ねることはほとんどしなかった(もっとも尋ねても聞き取れなかったろうが)。興味深そうにすべてを聞いてくれたが今にして思えば「この無神経者め」とおのれを責めないということはない。最後に「ナンデ、ヨーロッパニイッタ?」と聞かれ、またぞろランボー云々を語ろうとも思ったが俺の英語力では不可能を思い、「ペインティング」とだけ答えるに止める。彼は方眉を上げてサプライズを示してくれたものの、もはやこれ以上の会話の不成立を思ったようだ。挨拶を云って立ち上がるような素振りを見せたが一瞬ベッドわきにあった小卓に目を止めた(部屋の装備品)。その上に置いてあった英文の本に興味を示す。
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