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第四章 得度式と鏡僧侶
托鉢をしよう
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鉢をひとつ持たされて他の僧侶らとともに寺の外壁に並ぶこととなる。その外壁に沿って幅3,4メーターくらいの運河があるのだがそこへ信者たちが小舟でやって来て喜捨をするのだそうだ。バンコクでは道路同様に水路が発達整備されていて、水上マーケットなるものがあり、いまここに来るだろう信者たちもそこに於ける食べ物屋であるとのことだった。「食べ物をいただいても決してお礼を云わないように」と山本が釘を刺す。それは厳禁なのだそうだ。逆に喜捨した信者たちが合掌して頭を下げるのに僧は短くお経を返すのだそうな。しかしそれもできない俺はお辞儀的にひとつうなずくしかないだろう。いくばくもなく竹製の帽子をかぶった御婦人らが小舟を漕いであらわれ、ビニール袋に小分けしたご飯やらお数やらを僧たちの鉢に次々と入れて行く。端にいる俺たちの前まで来て一般人姿の俺の存在を婦人が見咎めて山本師に訊いた。「コレカラサマネイニナルオトコ」とでも答えたようでありがたくも俺にまで合掌してから食べ物を鉢に入れてくれた。いい匂いが袋からして食欲をそそられる。思わず「コックンカー(ありがとう)」と喉まで出かかったが危うくこらえた。そのかわりはっきりと日本式のお辞儀をしてしまうのだが、それを婦人はにっこりと笑って受けてくれた。しかしそれにしてもなんとまあ信仰に篤い人たちなのだろう。このような喜捨を彼女たちは毎日してくれるのだ。
【このような水路が市内至る所に造られていて庶民の生活には欠かせないものとなっている。これを使ってご婦人たちが商いをする分けです。from pinterest】
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