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第四章 得度式と鏡僧侶
宏六園なんかはどう?
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君がお会いすることはまあないだろうがね、ハハハ。もしサマネイの間に会えたとしたら、君は果報者だよ」と俺に期待を持たせるような云い方をする。しかし馬耳東風と云うか単に食住目当ての男に通じる話ではない。俺はヘーとばかりただ聞き流す他はなかった。そんな俺と見取りつつ「とにかく、君も日本人だ。ここにいる間は少なくとも住職への面汚しとなることだけはしないように。いいね」と云っていったん言葉を結ぶ。実際のところこれが真の受戒と云うかこれからのサマネイ生活への心構えを促すような、ひょっとして司祭した代理から「あの男はどこかなっていない。日本語で彼にわかるように、あなたから一言、戒のひとつなりとも授けてやってください」とでも仰せつかって来たかのごとき、鑑師から俺への訓戒だった。はたしてその方向に行けばいいのだが至って心もとない。とにかくそう釘をさしておいてから鑑師は話を替えて、こんなことを俺に訊いてきた。あまり乗って行けない話だった。「それはそうと、君は北国大学の学生なんだって?画学生?」「…はい」「だったらあそこ、宏六園なんか絵になるでしょ?私もね、寺の務めの合い間を見ては時々訪れてなどいたのよ。どう?描いたりした?」と、一番避けたい話題を持ち出して来たのだった。行ってもいない所をどう語れよう、俺は生つばを飲みながらこう答えるしかなかった。「い、いいえ、その…ぼくは人物画専門なんです。風景画はいっさい描きません」「ああ、そう…でも宏六園には行ったでしょ。君の大学のすぐ近くだし。あの霞ヶ池の徽軫(ことじ=琴柱)灯篭とか、唐崎松とか、その雪吊りとかさ、美感をもよおされたんじゃない?
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