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第四章 得度式と鏡僧侶
得度式
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「ウガーサ・ワンターミ・パンテー。サッパン・アパラッタン・カマタメ・パンテー…サートゥ・サートゥ・アヌモーターミー」正面の大きな金色の釈迦像が俺を見すえている。温和なお顔があたかも仁王像のようにおそろしく感じられる。その釈迦像の前に住職代理が座り、その前に高位の僧侶4名が2人づつ左右に分かれて合掌結跏趺坐している。住職代理がバーリー語で俺に得度の誓いを問い、下座で起立合掌の俺がバーリー語で答えるのだ。もちろんバーリー語など一語もわからず、前もってわたされていたカタカナ文を必死になって暗記して問答しているのだった。起立合掌する俺の姿は頭をきれいに剃り上げ、両の眉毛もあとかたもなく落とされていた。オレンジ色の僧衣を身につけて、姿ばかりは立派な僧侶となっている。しかし内実はと云えばいまさらのように得度の厳粛さを知って、いかに自分の心構えがいい加減なものだったかを痛感しているのだった。おそらく「汝、~の戒律を守るや否や」の類のことを聞かれているのだろうが当然意味はわからない。ただそれが住職代理の声ではなくその奥に鎮座まします仏像の声となって、あたかもいままでの生き方を問われているように、いや、叱責されているように俺には聞こえるのだった。この類の宣誓を、人は誰も、どこかで為した記憶はないだろうか?荒唐無稽と笑われそうだから詳しくは云わないが、ひょっとして生まれる前、霊であった時に然るべき存在のみ前で、これからの人間生活への指針を宣誓奉じたような…そんな原的記憶がふっと心をよぎる。
【金色のタイの仏像 from pinterest 不実な心を見透かされているようでした】
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