自らを越えて 第一巻

多谷昇太

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丹沢行(2)守護・指導霊の出現?

びっくりでげす

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しかし俺の口は止まらない「…でもそれじゃいつかたまらなくなって爆発しそうになるんです。だから俺、それを直そうと思って、俺の心の中の黒い霧から離れようと思って、それで丹沢に来たんです。わかります?大伴さん。それにカナさん」などと物怖じせずに聞く始末だ。実はこのとき俺は一瞬でも過去にタイムスリップしていた。中学入学時の、新クラスにおけるあの自己紹介の場面にだ。あの時にも俺の口が勝手にしゃべり出したような感じで、俺が口をきいているようには思えなかったのだがそれが時を経てなんと今に起こっているのだった。まったく、いったい何がどうなっているのか?
「え、ええ…よくわかるわよ、村田君。とても興味深い話だわ。それで?…続けて」大伴さんはそう云ってくれるが「それよりさ、あんた、なんで急にそんな風になっちゃったの?まるっきり別人みたいじゃん…」と可愛げもなくカナが云うのを「しっ、黙って。カナ」と大伴さんが止める。そんな2人の様子を見ながら「うん、そう。カナさん。実は、お、俺も…びっくりしてて…」と真の俺(?)が返答しようとしたがそれを止めるように俺ならぬ俺が「いや、ですからたぶん、ミカさんも同じじゃないかって俺は思うんです。ミカさんがふだん大事にしているものは〝みんな仲良し〟ってこと。(まるでミカに聞くように、そちらに目線をやりながら)いつもまわりがそれなら、きっと安心できるんじゃないのかな?でもなぜそうなったんだかは、それはわからないんだけどね(と、今度はなぜかカナに目線をやる)」などとまたも長広舌をする。ところが俺のその言葉にカナが片眉をつりあげ気味にして興味を示したようだ。それにかまわず「でも俺と同じで、ミカさんのまわりの人間がまるで〝みんな仲良し〟を強いられるように感じて、あるいは好意の強要を求められてるようで?…それでその、ミカさんに疲れちゃうんじゃないのかな?」と俺が云うのに「そう、そう、そうでげすよ!びっくりでげす。でも村田うじ、なんでそんなことが分かるの?」といつの間にか泣き止んだミカが聞いて来た。「なぜって…うーん、だから俺、ミカさんと同じ気があってさ、まわりから〝こいつ疲れる奴〟ってんで嫌われてしまったから、だから分かるような気がしただけさ。ハハハ」と快活に答える。すごい!いましゃべってる俺は絶対に俺じゃない。
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