自らを越えて 第一巻

多谷昇太

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成績発表

期末テスト

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 さてこんな理など未だつゆ知らず、迷妄の真っ只中にあった俺は何とかクラスメートの好意を得ようと、ただひたすら勉学に勤しむこととなった。予習復習を怠らず心中で『ちきしょう、ちきしょう』と毒づきながらの凄惨な行だったが却ってそれが励みになったものか、一年生の終り頃にはかなり結果が伴うものとなっていた。しかしその結果とは単に成績だけのことで、皆からの好意・厚遇は相も変わらず得られず、〝孤独の村田君”でしかなかったのだ。都度行われる全校的テストで好結果を出して、成績優秀者として廊下の掲示板に名が張り出されることがあってもそれは同じだった。呻吟の日々が続いたがそうこうする内に迎えたその年の期末テストでのこと、出題への読みがピタリと当たって、その試験結果には充分過ぎるほどの自信があった。いつものように廊下に模造紙で張り出された成績優秀者名簿を見ようと、俺は一階職員室横の掲示場へと赴いた。そこには十数名ほどの生徒たちが既に屯していて何やかやと論じ合っている。その陰からそっと模造紙を覗いてみると、何と、この俺の名前が最右端に記されてあった。「村田建三郎」と確かに一番右に記されてある。俺は「やったー!」とばかり心中で舞い上がり、且つ顔が紅潮してくるのを止められなくなった。今度こそはこの俺が一番である。無視できるものならしてみるがいいという気にさえもなる。まったく、中学時代以上の立派な成績をこうして都度示しているのに、なんで皆は俺にチヤホヤしないんだ?俺を持ち上げようとしないんだ?…が正直なところだった俺に憤懣のやる方などありようもなかった。今度こそはそういうことはあるまい、ここからが中学時代の再来となる、ようやく花の高校生活の始まりだ…などと妄想したその瞬間は、確かに高校時代におけるその指向での最幸福な一瞬だったろう。
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