葵の心

多谷昇太

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出会いの章

木屋町の女(2)

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〇茶屋の向一。手帳を取り出して何か書いている

文面をクローズアップ。心中の声として向一が文面を読み上げる。
向一(М)『うらぶれて帰る野道は遠からむ月待ちて行かな闇にぞ消えむ』
店の女将「(お茶の代わりを持って来て)お茶をどうぞ。お連れさん、志那乃姉さん、帰りはったんですか?」
向一「(慌てて手帳を閉じながら)あ、はい。先に……あの、連れじゃなくって、道中で偶々ご一緒させてもらっただけで……あの、あの方の名前をご存知なんですか?」
店の女将「へえ。正月とかどなたかの命日とかで、よう来られますさかい」
向一「はあ、そうですか……あの、いったいどういう方なんですか?あの方は」
店の女将「芸子さんですがな。京都で一、二の。もしお座敷に呼びはったらえろう高う付きまっせ。もっともお客はんにはまだ早うおますやろうけど(軽笑)」
向一「はあ、そう……だったんですか」
女将奥へ下がる。改めて志那乃の名刺を取り出して見つめる向一。続けて法輪寺の遠景を眺め、空を舞う鳩の群れを眺める。其其の連続画面。

              【京都・木屋町】
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